【秋古馬3冠達成トレーナーが振り返る】2004年ゼンノロブロイ 藤沢和雄元調教師「一生懸命に走りすぎないのがよかった」
今年の有馬記念は、天皇賞・秋、ジャパンCを制したドウデュースの秋古馬3冠達成なるかに注目が集まる。2004年にゼンノロブロイで史上2頭目の快挙を成し遂げた藤沢和雄・元調教師(73)が当時を回顧。その難しさを語るとともに、ドウデュースにエールを送った。 ◇ ゼンノロブロイを管理した藤沢元調教師は、3戦続けて出走する難しさを挙げる。 「3つとも勝つのは本当に大変。それこそ、3つとも使うこと自体がハードだよね。府中のタフなGⅠを続けて走り、さらに中3週で有馬記念となると疲れを残さずに持っていくのが難しい」 2004年の秋に華々しい成績を残したゼンノロブロイ。しかし、上半期は天皇賞・春2着、宝塚記念4着など惜敗が続き、秋初戦の京都大賞典もクビ差の2着。天皇賞・秋には賞金面で出走が微妙な状況だったが、他馬の離脱などがありゲートインできた。 短期免許で来日していたフランスの名手、オリビエ・ペリエ騎手を背に天皇賞・秋で待望のGⅠ初制覇。その勢いでジャパンCも制し、有馬記念は2分29秒5のレコード勝ち。堂々と史上2頭目の快挙を成し遂げた。 この間、藤沢元調教師は目が行き届く美浦の厩舎で調整を続けた。「何十本の追い切りより、1回の競馬が大事」。競馬を使うことで馬は自然と仕上がる。必要以上に強い追い切りはせず、藤沢流の丹念な調教で態勢を整えた。ちなみに有馬記念の追い切りは芝コースで5ハロン69秒0、3ハロン40秒2-13秒1の馬なりだった。 「まずは無事が一番。それぐらいで最初の天皇賞を勝てないようでは有馬まで余力を残せない。あの馬は〝でれすけ〟だった。調教も競馬も一生懸命に走りすぎない。それもよかったんじゃないかな」と振り返る。 今年はドウデュースが20年ぶり3頭目の秋3冠制覇に挑む。「ロブロイの3連勝はオリビエ(ペリエ騎手)が気を抜かせずに動かしてくれたし、彼の存在も大きかった。この秋はユタカくん(武豊騎手)もドウデュースの能力を上手に引き出している。何と言ってもダービー馬。マイルの2歳GⅠ(朝日杯FS)を勝ち、2400メートルのGⅠも勝つんだから強い。最後もダービー馬らしく、いい競馬をしてもらいたいよね」とエールを送る。(和田稔夫) ■藤沢 和雄(ふじさわ・かずお) 1951(昭和26)年9月22日生まれ、73歳。北海道出身。87年に調教師免許を取得し、翌88年に美浦トレーニングセンターで厩舎を開業。93年マイルCS(シンコウラブリイ)でJRA・GⅠ初勝利。98年にフランスのジャックルマロワ賞(タイキシャトル)で海外GⅠ初勝利。2017年には待望の日本ダービー初制覇(レイデオロ)。22年2月に定年により引退。JRA通算1570勝(重賞はGⅠ34勝を含む126勝)。