望まぬ延命治療なぜ起きる?「高齢者救急」現場の課題は?“日頃から意思表示”の重要性を専門家が指摘
2025年、国民の5人に1人が後期高齢者となり超高齢化社会を迎える日本。そうした中、日本救急医学会など関係する14学会は「高齢者救急問題の現状とその対応策についての提言 2024」と題したガイドラインをまとめ、厚生労働大臣に申し入れた。 【映像】“望まぬ延命治療”が起きている実態
提言によると、医療現場の課題として、心停止の際に心肺蘇生を行わない意思を明らかにしている人などが、高度な救急医療を提供できる病院に搬送されるケースが少なくないとのことだ。 「延命治療はしてほしくない」という意思を持つ高齢者に対して、高度な救急医療を施してしまう「望まぬ延命」はなぜ起きてしまうのか。『ABEMA Prime』では、今回の提言をまとめた中心メンバーの医師を招いて話を聞いた。
■望まぬ延命治療なぜ?高齢者救急のあり方とは?
内閣府の高齢者白書(2017年)によると、65歳以上の高齢者の延命治療に対する考え方を調査した結果、「自然に任せてほしい」と回答した人の割合が91.1%だったのに対し、「あらゆる医療をしてほしい」と答えた人の割合は4.7%だった。
しかし、今回の提言では、「自然に任せてほしい」と考える人に対して高度な救急医療が施されるケースがあるという実態が明らかとなった。その上で、人生の最終段階を迎えた高齢者が本人の意向に沿った医療を受けられるよう、高齢者救急のあり方がまとめられたという。 この提言で中心的な役割を担った、日本救急医学会メンバーで中京病院副院長の真弓俊彦氏は「高齢者救急の問題は、救急の医学会で長年シンポジウムなどが組まれてきたが、医療スタッフだけで議論をしても解決しなかったため、高齢者救急に関連する組織を含めて、多面的に分析した。少しでも高齢者救急を良くしたいとの思いから作成した」と補足した。 現状の問題点として「高齢者の救急搬送において軽症や中等症のケースが多いこともあるが、それ以外に、本人が心肺蘇生をしてほしくないという意思があっても、家族が救急車を呼んだ場合、救急隊員は心肺蘇生をして病院に運ばなければいけないため、救命センターに運ばれてしまう」と望まぬ延命治療が起きている実態を説明した。 そして、「心拍が再開した後に家族とその後についての話をすると、ほとんどの場合が『もう延命治療はいりません』となる。それは本人、家族、救急隊員、救命センターの皆にとって良くないことだ」と述べた。 では、延命治療を希望しない高齢者に対して、どのような治療を行うべきなのか。真弓氏は「提言でも伝えている“タイムリミテッドトライアル”というのがある。すべて最初からやめるのではなく、1~2週間は全力で治療を行い、経過を見てその後を判断する方法だ。難しいと判断した場合は、緩和医療に切り替える」と解説した。