3番ウッドの傾向は?チタンヘッドがじわじわ増殖 /女子プロクラブ考VOL.5
「寛容性」と「操作性」のバランス均衡型スプーン
次に注目したいのは、操作性と寛容性がバランスよく配分されたヘッドだ。列挙すると、穴井詩のキャロウェイ「パラダイム」、稲見萌寧のテーラーメイド「ステルス2」、岩井姉妹が使うヨネックス「EZONE GT」、菊地絵理香のPRGR「RS5」など。 これらのヘッドは、ウエートをソールに集中させるのではなく、ソールとヘッド後方に配置することで、重心深度を深くして慣性モーメントを上げてミスヒットに強くした。極端に低重心にせず、重心深度をやや深めに設定することで、寛容性が増しバックスピン量も増える。ヘッドサイズも大きすぎず小さすぎず、我々のヘッド速度でもシャフトをしっかり選べば十分使いこなすことができる。こうしたバランス系スプーンが女子プロの中のボリュームゾーンだ。
アマチュアにも即戦力 ミスヒットに強いスプーン
女子プロの中には、我々アマチュアが使うような、いわゆる“やさしいクラブ”を使っている選手もいる。共通するのはサイズが大きく、後方に重量が集まり、慣性モーメントが大きいヘッド。重心深度も深くなりミスヒットに強い。ただし、慣性モーメントを増やして重心深度が深くなると、重心の高さは上がってしまうので飛距離という点では不利だ。 例えば西郷真央はキャロウェイ「パラダイム X」を使用(昨秋時点。現在3Wは入れていない)。彼女は重心距離を短くすることで、ミスヒットの強さに加えて若干の操作性を味付けしている。川崎春花が使うテーラーメイド「SIM グローレ」は慣性モーメントが大きく、ミスヒットに強い。
最新モデルじゃなくてもOK スプーンは中古で探すのもアリ
女子プロのバッグをのぞくと、「何年モノ!?」という驚きのスプーンを目にする。桑木志帆が使うブリヂストン「TOUR-B XD-F」(2018年)や、青木瀬令奈が使うダンロップ「スリクソンZF85」(2018年)、西村優菜が使うキャロウェイ「XR16」(2016年)、上田桃子が使うキャロウェイ「X-HOT PRO」(2013年発売で上田桃子が使用したのは2016年から)は、すでに新品では手に入らないもモデルばかり。中古市場を探すと1万円以下で見つけることができるから、歴代の名器を見つけるのも一つの手だろう。 なぜ彼女たちがスプーンを替えないのか?ドライバーよりも狭いエリアを狙うクラブなので、飛距離性能よりもイメージ通りの球が出ることに重きを置いているからだ。彼女たちのスプーンのフェース面を見てほしい。打面の塗装が剥げている選手が少なくない。あきらかに練習量が多い上に、自分のスイングに合ったシャフトを選んでいるのだ。長年使っているスプーンでのスイングが基準となっている選手もいるほど。替えるに替えられないというのがほとんだろう。 今回紹介した女子プロが選んだスプーンは参考になっただろうか。ギア選びも重要だが、まずは多くのアマチュアゴルファーが苦手としているフェアウェイウッド自体を好きになることが肝心。5番や7番ウッドを使いこなして苦手意識をなくしてから、スプーンをじっくり選んでも、決して遅くはないはずだ。(文・田島基晴)