「EV売らないと罰金300万円」 排出ゼロ規制がイギリス自動車業界を直撃、消費者の不満がネットにあふれるワケ
メーカーの苦戦
EV需要が芳しくないなか、自動車メーカー各社は2024年、少なくとも20億ポンド(約3942億円)を値引きに使う予定だが、持続不可能といえるほど負担がかかっている。 SMMTとBMW、フォード、トヨタら大手メーカー13社の幹部らは財務大臣に書簡を送り、 「英国が政府の補助金を縮小しながら内燃機関の段階的廃止を急ごうとしている」 「義務化では市場は生まれない」 と主張し、新たなEV優遇策を要請した。 メーカー各社はここ数か月、短期的・長期的な戦略の調整を行ってきた(2024年10月15日付け、『This is MONEY』) 例えば、フィアットは販売減少のため500eモデルの生産を7週間停止し、ボクスホールはEV価格を大幅に引き下げ、トヨタは2026年のEV生産計画を下方修正といった具合だ。 る。 メルセデスやBMWは22%を上回る見込みだ。ホンダは2024年19%を目指している。日産は16.4%、ハイブリッドに注力するトヨタはわずか 「10.9%」 で年末を迎えると予想されていて、これは 全20社の主要自動車メーカーのなかで最低の数字だ。 しかし、環境シンクタンク『ニュー・オートモーティブ』の最高経営責任者ベン・ネルメス氏は、ライバル企業からクレジットを購入する可能性はあるが、2024年、ZEV関連の罰金を支払う必要のある自動車メーカーは 「1社もない」 と考えている。
ネット上に集まる個人の声
日本企業を含め、自動車メーカーが政策とEV低迷需要の板挟みになっている現状はわかったが、英国の消費者たちはどう考えているのか。インターネット上には、 「なぜ他人の車を割引するために税金を払わなければならないのか?」 「税金が企業に継続的に投入されてまだやるネットゼロとは?」 「一方で財務大臣は資金に困っている。EVは高価すぎるし、今後も変わらないだろう」 「EVを売りたいなら、開発費の回収のために価格をつり上げるのではなく、コストを自ら削減して利益を追求すべきだ」 「人々が購入したいと思う、リーズナブルな車をつくればいかなるインセンティブも必要なくなるはず」 といった意見が並んだ。英国でEVを購入する平均価格は約4万8000ポンド(約944万円)である。 2024年5月時点で102ものゼロエミッション車が市場に並び、スーパーミニからコンパクトクロスオーバー、高級セダン、スポーツカーまで選択肢は広がっているなか、普及拡大の妨げとなっている主な障壁は、特に ・手頃な価格 ・充電への不安 である。 バッテリー航続距離は平均300マイル(約482km)に向かっており、450マイル(約724km)以上のものさえあるが、路上を走るプラグインハイブリッド車35台につき標準充電器が1台しかない(『SMMT』2024年5月23日付け)とのことだった。しかし2024年初頭以降、イングランドの高速道路サービスエリアには150kW以上のEV充電器が200台追加設置された。過去8か月間で 「51%増加」 し、設置数としては新記録となっている。(2024年10月8日付けき、『RAC』)。 今後価格がどう変化していくのかが、最も気になるところだろう。
鳴海汐(国際比較ライター)