J-RIETの「スポンサー」と「アセットマネジャー」とは?
少ない資金で不動産投資が可能な不動産投資信託(REIT)の日本版、J-REIT。今回はその仕組みを理解するうえで欠かせない「スポンサー」と「アセットマネージャー」について、ミリタス・フィナンシャル・コンサルティングの田渕直也さんが解説します。
投資法人が果たす役割
前回お話ししたように、J-REITは投資法人制度を利用した投資信託です。投資法人には、投資家を保護する役割があるということでしたが、具体的には、(1)投資法人に法人税が課されず投資収益がそのまま投資家に分配されること、(2)特定の利害関係人の破たんなどに巻き込まれることなく本来の投資目的を貫徹できること、などが期待されています。 (1)に関しては、投資法人に法人税が課されてしまうと、税引後の利益が投資家に分配されることになり、その分配された利益にもう一度投資家としての所得税が課されるという二重課税が発生します。それを回避することが、J-REITの投資価値を毀損しないためにとても重要な点となるのです。この二重課税を回避する仕組みを備えることを、少し専門的な言葉になりますが、「導管性」と呼んでいます。 J-REITでは、投資法人が特定の利害関係人と一定以上の依存関係を持たないこと、利益の90%以上を投資家に分配すること、などを条件に、投資家に分配される利益について法人税が非課税となることが認められています。 また、(2)は「倒産隔離」と呼ばれています。投資法人はあくまでも投資家資金の受け皿となる“箱”であり、各種の業務を専門業者に委託しています。そうした専門業者の経営が破たんした場合でも、別の専門業者に再委託をすれば運営を継続することができます。つまり、投資法人が“箱”であることによって、特定の利害関係人の破たんなどに巻き込まれることを回避することができるわけです。
アセットマネジャーとは?
とはいえ、投資法人はあくまでも“箱”ですから、その“箱”を設立する母体や、運営管理などを担う特別な利害関係人が存在します。そうした利害関係人こそが、J-REITの実体を作り出しているわけですから、実際にJ-REITに投資をする場合には、その存在について十分に知っておく必要があります。 その中でも、J-REITの実際の運用方針や経営方針を定めるのが、アセットマネジャー(以下、AM)と呼ばれる不動産投資顧問会社です。 投資する物件の選定、取得価格の決定、取得した物件の運営方針や管理方針など、J-REITの根幹となる業務はこのAMに委託されます。ですから、このAMの実力こそがJ-REITの実力そのものということになりますね。また、投資法人もれっきとした会社なので執行役員という代表者がいますが、通常はAMから派遣されます。 このように、J-REITは形式的には投資法人によって運営されますが、実体的にはAMによって運営されるものとなっているのです。