J-RIETの「スポンサー」と「アセットマネジャー」とは?
スポンサーとは?
このAMの株主のことをスポンサーと呼んでいます。J-REITが設立される際の一般的な流れとしては、不動産会社、金融機関、商社などのスポンサーが子会社として不動産投資顧問会社を設立し、その不動産投資顧問会社がJ-REITを運営するという形になります。つまり、J-REIT設立のおおもととなる存在がこのスポンサーです。 またスポンサーは、J-REITが取得する不動産の供給者となることが多く、とくにJ-REIT設立時にまとめて物件を譲渡するなど大きな役割を果たす場合がほとんどです。 このように、J-REITにとってスポンサーはなくてはならない重要な存在なのですが、それが利益相反と呼ばれる重大な問題を引き起こす可能性があることには留意する必要があります。 実のところ、この利益相反問題は、J-REITに限らず、「ファンド」と総称される集団的な資産運用スキームに共通の問題です。簡単にいってしまえば、ファンドの運用を担う運用業者(J-REITの場合はAM)は当然のこととして投資家利益を最優先すべきなのですが、そうではなく、自分の株主であるスポンサーの利益を優先することで、投資家の利益を犠牲にしてしまうおそれがあるということです。 スポンサーは、J-REITへ不動産を譲渡する立場です。その立場からすると、譲渡する価格は高ければ高いほどいいわけです。一方で、J-REITの投資家の立場からは、不動産を取得する価格は低ければ低いほどいいということになります。ここで、スポンサーの子会社であるAMが、スポンサーの利益を優先して高い価格で不動産を取得する決定を下したら、投資家の利益は損なわれてしまいます。 もちろん、ほとんどすべてのJ-REITでは、不動産の取得価格が適正なものとなるように、取得価格や投資判断の透明性を維持するためのさまざまな仕組を導入しています。ただし、この利益相反問題は、単に形式的な仕組みを整えればよいというものではなく、スポンサー、AM、そして業界全体や投資家が、常に注意を怠らず、監視し続けることで初めてクリアできる問題です。そうした不断の努力があって初めて、J-REITは魅力的な投資対象としての位置づけを確立できることになります。 (ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役・田渕直也) 著書に『入門 J-REITと不動産金融ビジネスのしくみ』、『入門 金融のしくみ』『世界一やさしい金融工学の本です』(すべて日本実業出版社)