なぜ王座奪回を目指す鹿島アントラーズの始動は新監督不在、主力抜きの寂しいものになったのか?
50歳の新監督は腹心である3人のコーチたちとともに9日に来日し、宮崎キャンプから指揮を執る予定になっている。天皇杯決勝後に10人の退団と、U-23日本代表としてAFC・U-23選手権を戦っているDF杉岡大暉(前湘南ベルマーレ)ら5人の移籍加入が発表されている。 2人のブラジル人選手も新たに加入。開催中の全国高校サッカー選手権でベスト4へ進出している静岡学園(静岡)のエース、MF松村優太ら4人の高卒ルーキーも含めて、選手が大幅に入れ替わったチームを日本で初めて指揮を執る外国人監督が率いる意味を、鈴木強化部長も十分に理解している。 「最初から(順調に)というのは難しいというか、今年はちょっと覚悟しなきゃいけない。その意味でも(主力となる)選手たちも人間なので、フィジカルにもメンタルにも相当のダメージを負っていることを、やはり考えてあげなきゃいけない」 アントラーズの強化の最高責任者を1996年から担ってきた鈴木氏は、常にタイトルを狙える戦力を現場へ提供し、常勝軍団と呼ばれる強さの礎を築いてきた。たとえば年間34試合を戦うリーグ戦ではスタートが肝心となるが、今シーズンはそうした経験や鉄則にもとらわれないと覚悟を決めている。 「スタートダッシュというよりも、今年はチームをゆっくりと、少しずつ作りあげていって、秋口から勝負をかけられる感じになればいいかな、と思っている。もちろん(序盤戦も)何とかやり繰りしながら勝って、次へつなげていかなければいけないこともわかっている」 ACLのプレーオフも含めて、手探りでの戦いが待っているかもしれないからこそ、すでにコンビネーションができあがっている主力組が、心身ともにフレッシュな状態でチームに合流できれば、その分だけ視界も良好になる。無冠に終わった昨シーズンの悔しさを晴らす豊穣の秋を見すえながら、当面は経験が浅い若手や新加入選手をアントラーズ色に馴染ませる作業を加速させていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)