なぜ王座奪回を目指す鹿島アントラーズの始動は新監督不在、主力抜きの寂しいものになったのか?
「昨シーズンの終盤戦を見ていても、フィジカル的にまるでオーバートレーニング症候群のような状態になり、メンタル的にも集中力を欠いてパフォーマンスが上がらなかったところがあった。こうした状態が3年も4年も続いてきたなかで、メリハリをつけなければいけないとずっと考えてきた。なので、今年は思い切って休ませよう、という決断をくだしました」 昨シーズンの明治安田生命J1リーグを振り返れば、残り4試合の段階でアントラーズは首位に立っていた。しかし、第31節以降の3試合で1分け2敗と失速し、横浜F・マリノス、FC東京と三つ巴だった争いから脱落した。一度陥った悪い流れは、天皇杯決勝でも修正できなかった。 原因は2018シーズンにあると鈴木強化部長は分析している。クラブ史上で初めてACLを制し、アジア大陸代表としてUAE(アラブ首長国連邦)で開催されたFIFAクラブワールドカップに出場。3位決定戦に臨んだ、12月22日の大会最終日まで戦ったことでオフが短くなった。 2017シーズンは首位で迎えたJ1最終節で引き分け、川崎フロンターレの初優勝をアシストしたことで精神的なショックを引きずった。2016シーズンは下克上でJリーグチャンピオンシップを制し、FIFAクラブワールドカップでも準優勝。勢いそのままに元日の天皇杯決勝でも美酒に酔った。 終盤に激戦が待つシーズンが続き、勝ち進むごとにオフも短くなる。ジレンマを抱えながらも常に全力を尽くしてきた代償として、主力選手たちの心身にも限界を越える負荷がかかっていたのだろう。昨シーズンをまさかの無冠で終えた結果も、鈴木強化部長の背中を押したはずだ。 アントラーズを取り巻くさまざまな変化も決断を促した。天皇杯決勝を最後に、2017シーズンの途中から指揮を執ってきた大岩剛監督が退任。現役時代に柏レイソルでプレーした経験をもつ、ブラジル人のアントニオ・カルロス・ザーゴ監督が就任することが決まった。