日本を「最速」で守れるのは戦闘機だけ…50年以上前の「長寿モデルF-15」が重宝されている2つの理由
■命令が出たら5分以内にスクランブル発進 戦闘機パイロットの重要な任務の1つに、アラート待機があります。 アラート待機とは、戦闘機を運用する各基地の戦闘航空団において、対領空侵犯措置命令が発せられたときに直ちに発進できるよう、24時間365日待機する任務のことです。 アラート待機につくと、まず、ブリーフィングでその日の天候などを確認し、頭に叩きこみ、かつ重要事項をメモします。メモは、いざというときに上空であわてないための用意です。このメモをパイロットは「アンチョコ」と呼びます。 アラート待機では、いつ発進命令が出るかわかりません。命令が出たら、5分以内にスクランブル発進しなければならないので、常に緊張した状態で発進準備をしています……といいたいところですが、100パーセントの緊張感を保ち続けるのは無理です。 ■オンとオフの切り替えが非常に重要 常に緊張していたら、精神的にも体力的にも疲弊してしまいます。むしろ、いざというときにすぐに集中、緊張できるように、待機中はリラックスして、人それぞれ思い思いに好きなことをして過ごしています。 私が編隊長として沖縄に勤務していたときは、待機所のなかで、資格取得のための勉強をしたり、雑談をしたり、トランプやゲームをしたりすることもありました。そんな最中でも、もしも緊急発進を知らせるベルが鳴ったら(消防署のようなベルが、ジジジジジッとけたたましく鳴ります)、実弾を搭載してある戦闘機に乗りこんで直ちに出動しなければなりません。 当然、緊張します。だからこそ、待機所にいるあいだは、緊張を緩めておきながら、いざというときにすぐに動ける態勢にしておくのです。 絶対に失敗してはならない命令がいつ訪れるかわからない。心の準備もできない。この感覚は、戦闘機パイロットならではといえるのではないでしょうか。
■2010年ごろから那覇基地が多忙に 自衛隊が初めてスクランブル発進の体制をとったのは、1958年のことです。その後の長い歴史のなかで徐々に増えていき、ピークは2016年の1168回。以降は年間1000回程度で落ち着いています。 それでも、平均すると毎日約3回、全国どこかの基地からスクランブル発進していることになります。 2000年以前は、ソ連(ロシア)の動きが活発だったため、北海道の千歳基地がもっとも忙しかったのですが、2010年頃からは中国が軍事力をつけてきたことにより南方が中心となりました。近年は全体の7~8割が沖縄県の那覇基地からのスクランブルです。 詳細を知りたい方はぜひ、防衛省のホームページを覗(のぞ)いてみてください。スクランブル発進の歴史や現状を知ることができます。 ■忙しい基地だと経験値や度胸が伸びるが… 私が那覇基地に勤務していたのは2016年から2017年までの約2年間でした。前述したようにもっともスクランブル発進の多い年で、2016年は那覇基地だけで811回。本当に忙しい毎日でした。 若手のときに那覇勤務になると、スクランブル発進が多すぎるため、通常の訓練をする時間がありません。機体の細かいコントロール技術などの練習ができないわけですが、その分、実地経験を積むため、経験値や度胸といった部分は明らかに伸びます。スクランブル発進の多さは、戦闘機パイロットとしては、メリットもデメリットもあるわけです。 スクランブル発進したあとは、オーダーに従って任務を遂行します。 たとえば、他国の飛行体が日本の領空に向かって飛んできているとします。ある距離まで接近した時点で発進命令が出され、スクランブル発進します。 パイロットには、飛行体がどこの国の基地から発進したものか、ファイター(戦闘機)なのかボマー(爆撃機)なのか、といった、その時点でわかる限りの情報が与えられて、オーダーが出されます。