「山積した日本の問題 私が考える予算ゼロなのに効果絶大な画期的解決策」稲垣えみ子
元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。 【写真】稲垣さんが作った原価200円程度の晩酌セットはこちら * * * 岸田首相の人気が超低空。個人的感想としては、じゃあそれ以前の首相は良かったのかというとそんな気はしないのでいまいち理由がわからないんだが、とはいえ私も現政権を好まない。理由は、何をやるにも「じゃあ誰が金を出すのか」という議論を避けまくっていること。議論すれば増税って話になり選挙に負けるかららしい。いわば姑息な人気取り(なのに人気なし)。 しかし考えてみればそれも致し方ないところがあって、とにかく国に金がない。だが高齢化少子化人手不足インフレ円安格差拡大など問題は山積し、誰もが手を打てと思っている。でも誰も金を出したくはない。この根本的な八方塞がりをどう打開するかは、誰が政権を取ろうが避けて通れぬ大問題である。 で、実は私、この問題に対する画期的解決策を知っておりましてですね、毎回、この種のニュースを見るたびに「なんでアレをしないかなー」と1人ブツブツ言っている。なので誰にも頼まれちゃいないが、その解決策を特別に教えて差し上げようと思いまして。
それは、全ての人が家事をすることである。性別関わらず、炊事洗濯掃除、自分の身の回りの始末は自分でつけることを当たり前にする。お母さんが家族の生活を一手に引き受け面倒をみるのでなく、全員が自立するのである。 その効果は全く絶大である。労働の前提条件に男女格差はなくなり女性活躍など普通のこととなろう。女性だけにかかりがちな結婚の負担も減り少子化の歯止めにもなろう。自立した男性が増えれば高齢者支援にかかる負担も減るはずである。また自立している人は誰かに威張って見せずとも自尊心が保てるので、カスハラやDVなどやりきれない暴力も減るはずだ。そして、こんなに効果絶大なのに予算ゼロで達成できる。要はやる気の問題なんだから。 こんなにスーパーなアイデアなのに誰も言い出さないのはなぜなのか。それは我が国の偉い方々が家事をしてないからじゃないかと私は疑っている。首相、家事してます? いながき・えみこ◆1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。著書に『アフロ記者』『一人飲みで生きていく』『老後とピアノ』など。最新刊は『家事か地獄か』(マガジンハウス)。 ※AERA 2024年6月17日号
稲垣えみ子