「危険ドラッグにハマる理由は性的欲求」 『脱法ドラッグの罠』著者・森鷹久氏に藤井誠二が聞く(第3回)
藤井:『脱法ドラッグの罠』でもお書きになっていたけれど、そういった研究とか調査とか、さまざなま捜査の手法を含めて、やっぱり日本が認識が甘かったと考えていらっしゃる。 森:甘いと思います。まさに僕も含めてなんですけど、日本人にとってドラッグの問題というのは、どういう認識で皆さんお考えなのかなと思いまして、まさに禁止されてるから、やっちゃいけないから駄目なんだと、法律が単純に禁止してるから駄目なんだ、そこで思考停止になってしまっています。じゃあなんでドラッグに手を出しちゃ駄目なのか、そのドラッグがどういうプロセスでできて、精神に人体にどういう影響を及ぼすかというところまで、なかなか考えにくい世論というか、そういう議論まで行き着かないような気がしています。 藤井:よく「人間やめますか、薬やめますか」みたいなのがありましたよね。それは主に覚せい剤とかの話なんですけど、そういった啓発みたいなものもやっぱり少なかったということですかね。 森:非常に少なかったと思います。かつて合法ハーブと呼ばれてて、それが名前が非常におかしいと、合法という言い方はいかにも適法なイメージを皆さんに抱かせてしまうということで、そこに当局が介入して脱法ハーブというふうになったんです。はっきり言って、そういう(呼び名を変えることに)意味があるのかなと僕は当時思ってたんですけど。で、揚げ句の果てに危険ドラッグがどんどん出てきて、事件が起きている。危険だから危険なんだという説明だけで皆さん、理解できるのかなと思います。 藤井:これだけの悲劇をたくさんもう生んでる状況まで、やっぱり気付くのが遅かったというか、社会全体も対応も遅かったということですね。 森:もう、そうとしか言いようがないんじゃないかなと思います。 (第4回に続く) -------------- 森鷹久(もり たかひさ) 1984年生まれ、佐賀県唐津市出身。高校中退後、番組制作会社を経て出版社でヤングカルチャー誌やファッション誌を編集。その後、フリーランスの編集者・ライターになる。精力的にドラッグ問題を取材。 藤井誠二(ふじい せいじ) 1965年愛知県名古屋市生まれ。ノンフィクションライター。高校時代よりさまざまな社会運動にかかわりながら、週刊誌記者等をつとめながら一貫してフリーランスの取材者。『17歳の殺人者』(朝日文庫)、『暴力の学校 倒錯の街』(朝日文庫)、『人を殺してみたかった』(双葉文庫)、『コリアンサッカーブルース』(アートン)、『文庫版・殺された側の論理』(講談社アルファ文庫)、森達也氏との対話『死刑のある国ニッポン』(金曜日)、『アフター・ザ・クライム』(講談社)、大谷昭宏氏と対話『権力にダマされないための事件ニュースの見方』(河出書房新社)、『三つ星人生ホルモン』(双葉社) 等、著書多数。