生田斗真×ヤン・イクチュンが目指した“怖いけど面白い” 今後の海外作品出演への思いも
あっという間に終わってしまったーー。映画『告白/コンフェッション』を観たときの率直な思いだ。『カイジ』の福本伸行と『沈黙の艦隊』のかわぐちかいじという、漫画界のレジェンドによるタッグ作を、山下敦弘監督、脚本を幸修司、高田亮の布陣で映画化した本作は、最初から最後の最後まで観客を一切飽きさせない物語となっている。 【写真】モノクロがカッコいい 生田斗真×ヤン・イクチュンインタビュー撮り下ろしカット(複数あり) 極限状態に置かれた死を覚悟した親友の最期の“告白”を聞いてしまった男と、言ってしまった男。ほぼ2人芝居の物語を成立させたのは、生田斗真とヤン・イクチュン。限界状態でぶつかり合う男たちを2人はどんな思いで演じたのか。じっくりと話を聞いた。
“怖ければ怖いほどちょっと笑えてくる”バランス
――お2人は初共演となりますが、生田さんはヤンさんの出演作・監督作などもご覧になっているかと思います。 生田斗真(以下、生田):もちろんです。『息もできない』(※ヤン・イクチュン監督作品)も観ましたけど、やはり衝撃的でした。これはお国柄もあると思うんですが、韓国の俳優さんのお芝居は感情の起伏が激しいというか。怒るときはすごく沸点が高いし、悲しむときにはドーンと落ち込む。その感情の幅の広さは勉強になります。役者だけでなく、スタッフも本当に勉強していることがわかるので、我々も負けずに頑張っていきたいですね。 ──今回、役を作り上げるにあたってどんなアプローチをされましたか? 生田:演じる浅井がどういう人間なのか、キャラクターのバックグラウンドが見えにくい物語だったので、撮影現場での感情の動きを大事にするようにしました。ヒリヒリした空気感をキャッチするために、瞬間、瞬間の感覚を研ぎ澄ましていましたね。毎日がイクチュンさんとのセッションという感じでした。 ヤン・イクチュン(以下、ヤン):どの作品でも最初に同じアプローチをするのですが、自身が演じるキャラクターが生まれる前、つまり彼の両親の物語から始めて、彼が生まれた瞬間から、どんな経過を辿ってきたのかを自分で考えます。まるで短編小説を書いていくような感覚で、脚本の1ページ目に至るまでのストーリーを自分で作り上げることによって、役作りをしていきます。そんなふうに人物設定をしていくと、それが心理的なベースになって、演じるときに作用してくれるのです。キャラクターによって、その都度ポジショニングは変わってきますが、今回演じたジヨンは幼少期から平凡な人間だったという位置づけをしました。普通の人物が非常に大きな出来事を経験したとき、いったいどんな変化が起きるのか、特にそこが重要でしたね。 ──ヤンさんは韓国語の台詞もありましたが、どう演じようと思われましたか? ヤン:韓国語に関しては、かなり意見交換をさせていただきました。単語や語尾が変わるだけで、意味は変えることなく、リアリティのある台詞にして、それに感情をのせることが必要だと思ったからです。山下監督も脚本家のおふたりも、快く受け入れてくださいました。 ──生田さんは、演じた浅井をどんな人物と捉えましたか? 生田:ジヨンとの関係性で捉えるようにしました。大学時代からの親友で、心と心の強い繋がりがあるのですが、そこには単純な友情や愛情ということだけではなく、かなり歪な感情も入っている。そんな関係性が滲み出るように演じたいと思いました。 ――今作は、ホラーなのかなと思いきやユーモラスな場面もあったりして、そのバランスが絶妙ですよね。 生田:2人が雪山で遭難して、ある告白をきっかけに殺し合いのようになっていくんですが、“怖ければ怖いほどちょっと笑えてくる”ってあるじゃないですか。昔のゾンビ映画とかも、ゾンビがものすごく速く走ってくるのが怖いけど、ちょっと笑けるっていう。山下監督は、当初からそっちを狙って作りたいとおっしゃっていました。なので、ジヨンが階段からゴロゴロ転がってくるところとか、首がボキッとなるところとか、怖いけどちょっと笑える。あの絶妙なバランスは、山下監督ならではなのかなと思います。 ヤン:山下監督はすごく純粋で穏やかな方ですが、実は強い意志を持たれている方です。ワンシーンワンシーン、自分が「こう撮りたい」「こう表現したい」と思ったところに至るまで、とにかく粘り強く撮影されます。その粘り強さが、山下監督ならではのイメージを作り上げているのかなと思います。 生田:「やりたいこと」「撮りたいこと」が明確な監督であったことは間違いないですね。 ――密室劇という限られた空間での撮影はいかがでしたか? 生田:ジヨンが暴れ始めてからは、実際に斧を使って彼がセットをぶっ壊していました(笑)。「うぁーーーー!」って。 ヤン:あれは全部、壊されるためにあったんですよ(笑)。 生田:そうそう。斧で削った木とかがリアルだから、すごく生々しくて怖かったんですよ。扉も“壊れたふう”を作っているわけじゃなくて、本当に彼が壊してるから。 ヤン:スタッフが仕掛けをして、うまく壊せるように作ってくださっていたからこそ、こちらも思い切り壊すことができました。たとえ「壊していいよ」と言われても、俳優が思い通りにできるものではないと思います。スタッフのみなさんが完璧にセッティングをしてくださったおかげで、こちらも心おきなく壊せました(笑)。 ――撮影では、テイクを重ねることも多かったのでしょうか? ヤン:テイクを何度も繰り返すというよりも、カット割りが多かったですね。大切なシーンは、監督も制作スタッフの方たちも長い時間をかけて撮ってくださいました。 生田:3週間くらいほぼ同じセットで撮っているので、ずっと同じ怖さをキープしなきゃいけないのが大変でした。たとえば、ジヨンが階段から落ちるところまで撮影をして「お疲れ様でした」と帰って行って、次の朝また「うぁーーーー!」というところから始まるので(笑)。 ヤン:「喉が痛いです~」って(笑)。立派な俳優さんだったら腹式呼吸を使うといいのだと思いますが、僕は喉を使って叫んでいたので、早いうちに声が枯れてしまいました。