コスモスポーツ 後期L10B【2】オーナーがドイツのアウトバーンで170キロ走行しても、コーナリングも巡航速度も現代の車に負けず劣らず
マツダといえば、ロータリーエンジン(以下RE)。REは新世代エンジンとして世界中の自動車メーカーが開発し始めた夢のエンジン。1960年代になると旧ソ連とアメリカの宇宙開発が本格化し、技術革新が始まった。自動車界の技術革新の賜が、2スロREを搭載したコスモスポーツだ。 【画像22枚】リアのオーバーハングも薄さが強調されたデザインとなっている。上下に2分割されたテールランプは、オリジナル度が高く特徴的だ 【マツダの100年 1969年式 マツダ コスモスポーツ vol.2】 この個体は後期型で、ディメンション変更にラジアルタイヤの装備、ミッションの5速化、そして吸・排気ポートの変更などを施したマイナーチェンジ後の仕様。装備の充実化とパフォーマンスアップが図られている。とはいえ、装着しているパーツは後期型といえども製造時期によって異なる部分が多数あるという。完全に管理されたプロダクト化はもう少し後の時代になってからなのだ。 しかしオーナーがコスモスポーツに引かれるのは、生産管理によるプロダクト化やコストダウンとは無縁の専用設計の特別感を持っていることだと言う。そしてあまり語られることはないが、重量配分が50対50に近いフロントミッドシップの元祖のような設定となっていること。足まわりも重量物がボディ側にセットされていることから、バネ下重量が低減されている。そしてデフもボディに固定されており、リアの足まわりはド・ディオンチューブを介して左右別々の可動を可能としているなど、実に変わった構造となっている。このことからハンドリングは軽快だし、思い通りのラインをトレースできる、今でも一級品と言っても過言ではないコーナリング性能を発揮できるという。 現代のクルマのインプレッションみたいな話だが、ただ唯一違うのは、スピードレンジ。グロス128psで950kgの車体を200km/hオーバーの世界へ誘うというわけにはいかないのだ。ちなみにオーナーが所属するコスモスポーツオーナーズクラブの人達とヴァンケル研究所などを巡ったドイツ遠征をした時、アウトバーンの速度無制限区間をメーター読みで170km/hで巡航したのが体感した最高性能だという。もちろん200km/hも可能だったと思うが、そこは大人の判断でマージンを取ったというところだ。しかしコーナリングも巡航速度も、現代においても決して恥じるべきものではなかった。だからリアルスポーツといってもよいだろう。コスモスポーツは、見た目以上にスポーツカーとしての高い資質を持ち合わせている。 主要諸元 SPECIFICATIONS 1969年式 マツダ コスモスポー L10B 全長 4130mm 全幅 1590mm 全高 1165mm ホイールベース 2350mm トレッド前/後 1260/1250mm 最低地上高 125mm 室内長 870mm 室内幅 1300mm 室内高 990mm 車両重量 960kg 乗車定員 2名 最高速度 200km/h 登坂能力 tanθ0.553 最小回転半径 5.2m エンジン型式 10A型 エンジン種類 水冷2ローター・ロータリー 総排気量 491cc×2 圧縮比 9.4:1 最高出力 128ps/7000rpm 最大トルク 14.2kg-m/5000rpm 変速機 前進5段・後退1段 前進フルシンクロメッシュ 変速比 1速3.379/2速2.077/3速1.390/4速1.000/5速0.841/後退3.389 最終減速比 4.111 燃料タンク容量 57L ステアリング形式 ラック&ピニオン サスペンション前/後 独立懸架筒型複動オイルダンパー・コイルバネ/筒型複動オイルダンパー半楕円形板バネ ブレーキ前/後 ディスク/リーディングトレーリング タイヤ前後とも 155HR15ラジアル 発売当時価格 158万円 初出:ノスタルジックヒーロー 2020年4月号 Vol.198 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部
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