世紀の大発見!? 「ほぼ完璧」なアウストラロピテクスの頭骨が教えるヒトのルーツ
化石から垣間見えるホモ・サピエンスのルーツ
A.アナメンシスとA.アファレンシスが共存していた可能性を指摘した研究チームは、「正解」にあたる頭骨のデータを使って、さらにこれまでに見つかっていたA.アナメンシスの化石標本を調べた。その結果、どうやらA.アナメンシスは「四つの集団(=個体群)」に分けることができ、それぞれの集団はエチオピアを含むアフリカ東部の中でも、別々に生息していた可能性が高いことが分かった。 これは何を意味するのだろうか? 同じA.アナメンシスであっても、他のグループと交配(=遺伝子的な結合)する機会がなかったということは、長い時間が経過するうちに、四つの集団のうちの一つが、新しいルーシーの種であるA.アファレンシスへと進化することを可能にしたのだろう。そして、それがさらには我々を含むホモ属へ進化していったとは考えられないだろうか? この四つの集団が具体的にどのような進化の道筋をたどったのか、あるいは絶滅したのか? 化石から得られる情報がまだまだ乏しく、詳細は今のところはっきりと分かっていない。 しかし、「空白の期間」とされてきた約390万~350万年前にあたる地層から、今後、新しい化石がさらに発見されていけば、われわれホモ・サピエンスの祖先であるアウストラロピテクスが、どのような進化のプロセスを歩んだのかが徐々に見えてくるかもしれない。 著者略歴:池尻武仁(博士)。名古屋市出身。1997年に渡米後、2010年にミシガン大学で化石研究において博士号取得。現在アラバマ大学自然史博物館研究員&地球科学学部スタッフ。古脊椎動物(特に中生代の爬虫類)や古生代の植物化石にもとづくマクロ進化や太古環境の研究をおもに行う。Twitterアカウントは@ikejiri_paleo