『くる恋』公太郎さんがたまらない! フィクションをリアルな世界にする瀬戸康史の説得力
公太郎(瀬戸康史)が口にした「寂しい花のままで良かったのにな」の真意は?
さて、気になる最終回。記憶を無くすという事態に見舞われたまことだが、「好きなこと」へのアンテナは変わらなかったように思う。アンテナを封じ込めてきた以前のまことに対し、キャラを演じる必要のなくなったまことは、本当の自分のアンテナに素直に従って行動できるようになった。そのうえで、好きになったのは公太郎だ。 第10話ラストで、朝日(神尾楓珠)が意味ありげに階段から下を見つめていたが、これは、あくまでもまことのことを心配して、事実を知りたくての行動だと思いたい。自分でも気づかぬうちにストーカーになっているのでは?という予想もあるが、それもないのではなかろうか。律(宮世琉弥)は、クリスマスのあと、まことと別れていたのだろう。自分が指輪の相手ではないと知っているからこそ、受け取らなかった。そこに彼の誠意が見える。事故当時にうさぎの着ぐるみを着ていたことと、まことへの想いが残っていることから危うい人物ではあるが、公太郎のことを知らなかったことからも、彼もストーカーではないはず。最終回で、律の想いも昇華されてほしい。 そして公太郎。まことは、律と別れたあとに、公太郎のことを好きになっていたと感じる。たびたび差し込まれてきた映像でも、記憶を無くす以前から、公太郎に惹かれていたことが伝わった。それより気になるのが、公太郎が思い出す、「寂しくていい匂い」について、まことと一緒に公園のブランコに座り、語っているシーンだ。公太郎とまことはあくまでも、“花屋の店長と花を買わない客”だったはずだが、店以外の場所で会っていたのはなぜなのか。前回、公太郎が口にした「寂しい花のままで良かったのにな」の真意とは? そして最終的な予想として往々にあるのが、まことは誰も選ばないパターン。指輪も、たとえば離婚した父に作ったもので、まずは職人としての夢に向かって歩き出す、という終わり方だ。いまの時代にあってるといえばそうだが、本作に関しては「恋愛」にこだわってほしい。そのうえで、浮かぶのは公太郎。大学時代の律との出会いの際の言葉はとてもステキなものだったが、それでもまことは彼の前ではキャラを作っていた。やはり“12色の色鉛筆じゃない世界”を教えてくれた公太郎と結ばれるラストを望みたい。ストーカーに関しての部分の謎は残ったままなのだが……。 第10話の終盤、律とハグするまことを見て、悟ったような寂しい笑顔で立ち去った公太郎は観ていてツラかった。自分と出会い直したまことには、また公太郎の待つ花屋に笑顔で入っていってほしい。街を歩くまことと公太郎の2ショットはとても自然で、杏璃(ともさかりえ)の言う通り「ふたりはまとっている空気が似ている」のだから。ふたりの世界を、フラワーショップを、そこにあるものとしてさせる瀬戸の魅力を再確認しながら、そう感じている。
望月ふみ