ネット上に氾濫する「首ポキ」動画の危険性 タイマッサージでは20歳女性の“死亡事例”も…
■あえて“首ポキ”を売りにする悪質施術者 さらに恐ろしいのが、死につながるケースだ。頚椎の骨には「鉤状(こうじょう)突起」と呼ばれるとがった部位がある。この突起が衝撃によって欠けることで、破片が付近の動脈を傷つける事例が報告されている。脳への血流障害が起きれば、脳卒中や内臓不全によって命を落とすこともある。 これだけのリスクがあるにもかかわらず、なぜ安易な“首ポキ”がいまだに横行しているのか。その理由について、小野寺氏はこう語る。 「正しく安全な施術には、人体機能学や解剖学といった幅広い知識に加え、経験に裏打ちされた触診能力が必要です。しかし、未熟な施術者は少なからずいて、消費者側も見極めが難しいため、音を鳴らすというインパクト重視の施術に飛びつく人たちが出てくるわけです」 中には、危険だと分かっていながら、あえて“首ポキ”を売りにしている悪質な施術者もいるというから驚きだ。小野寺氏が続ける。 「コリや痛みを打ち消すような強い刺激を入れてまひさせれば、一時的に不快感は緩和されます。でも、次第に以前のつらさが戻ってくる。そういうお客さんに回数券を売りつければ、何度でも通ってもらえるわけです。強い刺激に慣れると、まっとうな施術者の安全な手技では物足りず、首ポキなしでは生きられない体になる。健康になることではなく、施術を受けることを目的にさせる手法です」 過激な“首ポキ”動画を公開している施術者には、消費者側が「危ない」という意識を持てるようになるべきだろう。悲惨な事故が起きてからでは、手遅れになってしまう。 (AERA dot.編集部・大谷百合絵)
大谷百合絵