世界で激戦を展開 日本の小型車「Bセグ」のいま
このように、先進国と新興国では、クルマの性能に割り振るリソースの配分思想が根本的に違うのだ。自動車メーカーが両方のマーケットでクルマを売ろうと思えば、本質的には2種類のクルマを作るしかない。 トヨタは新興国専用のヴィオス、エティオス・リーバに加え、先進国向けのヤリス(ヴィッツ)、サイオンxB(カローラ・ルミオン)、サイオンxD(ist)と鉄壁の布陣。ホンダは、新興国専用のシティと、先進国向けのジャズ(フィット)で両マーケットのニーズに対応して隙の無いラインナップを構築しているが、そうはいかないメーカーもある。例えば日産はマーチで、三菱はミラージュで両方のマーケットを戦わなくてはならない。当然、先進国向けに開発した高価なクルマでは、逆立ちしても新興国マーケットには参入できないので、こうしたケースでは基本設計を新興国に置くことになる。コストダウンを達成するためには人件費の安い新興国で生産するため、生産技術も現地の水準に合わせるしかない。エンジンや装備を上級に振ったモデルを作り分けることで先進国マーケット向けの商品を仕立てているのだ。 つまり、Bセグメントは対象とする顧客層によってクラスが分かれていて、本来はそれぞれ別のクルマだと言っていい。嗜好の多様化した先進国向けには、さらに細かいバリエーションがある。例えば日本のBセグメントには付加価値を高めたSUVモデルや、3列シートモデル、あるいはファッション性に特化したモデル、幼児を抱いた母親や高齢者の乗り降りを重視してドア開口面積を大きくしたモデルなど様々なモデルがある。しかし世界戦略車としてざっくりとみた時には概ね3つのクラスと思っていいだろう。 ●現在の主なグローバルBセグメントカー ・新興国向けクラス 日産マーチ、三菱ミラージュなど ・先進国向けクラス トヨタ・ヴィッツ、ホンダ・フィット、フォルクスワーゲン・ポロなど ・先進国向けプレミアムクラス BMWミニ、トヨタ・アクア、ホンダ・フィット・ハイブリッドなど