世界で激戦を展開 日本の小型車「Bセグ」のいま
先進国と新興国で異なる要求
一口にBセグメントと言っても、実は国によって要求される内容は全く違う。日本や西欧、北米の様な裕福な先進国でのBセグメントは「安さを優先した小さいクルマ」ではなく、大きなクルマに負けない安全性や洗練されたデザイン、高い質感、上質な乗り心地が求められる。つまり先進国でのBセグメントは「物理的に小さいだけで、安モノではないクルマ」なのだ。 最も解り易い例はアクアやフィット・ハイブリッドだろう。世界最先端技術が惜しみなく投入された小型車は当然高価になる。同じ値段でもっと大きなクルマも買えるにも関わらず、道路や車庫などの様々な事情や、社会思想によって積極的に選ばれている小さいクルマだ。その性格上、大きいクルマと比べて機能や思想が劣っていてはいけない。普通に考えてコスト高になるのは当然だ。 しかしながら世界のマーケットは先進国だけではない。むしろ現在、販売台数の急拡大が見込まれているのは新興国でモータリゼーションの立ちあがりを担う安価な小型車だ。 安全性や質感を高めるにはコストがかかる。新興国マーケットでは、そのあたりにある程度目をつぶらないと最も重要な価格勝負で負けてしまう。だが、問題はコストだけではない。新興国では求められるユーティリティが違うのだ。何よりもまず積載性が優先される。定員や積載上限を超えた人や物を乗せる状況が普通にあるからだ。しかし限られた外寸の中ではデザインとスペースは互いに制約しあう。積載性を優先させればデザインの自由度は下がる。内装に豊かな曲面デザインを取り入れるより、室内寸法を侵食せず多彩な収納スペースを持つ実用性が求められる。ルーフラインの流麗さより後席頭上空間が大事だ。 道路環境も違う。舗装道路主体の設計と不整路前提では、自ずとボディやサスペンションに求められる頑丈さも違う上、メインテナンス環境も整っているとは言い難い。過積載が日常的ならなおさらヘビーデューティーにならざるを得ない。その上で乗り心地を洗練させることは難しい。