「東北三大地主」の子孫は秘湯の経営者、「日本の製紙王」の子孫は競馬評論家に……47都道府県「名家」の当主に会いに行ってみたら
競馬会に名を残して
埼玉県出身の実業家でつとに有名なのは、渋沢栄一だ。しかし、その甥の大川平三郎も、王子製紙をはじめ数多くの製紙会社を経営し「日本の製紙王」として名高い。 その平三郎の子孫・大川智絵氏(64歳)が語る。 「大川財閥の礎を築いた平三郎さんは、もともと渋沢栄一さんの書生でした。その仕事ぶりが認められ、庶子を嫁にもらってできたのが、私の祖父・義雄さんです。私は渋沢さんの玄孫に当たります。 製紙会社を受け継いだ義雄さんは渋沢さんに似て遊び人だったようです。競馬が好きで青森に牧場をつくり、私の父も馬に接するうちに競馬が好きになったんですね」 智絵氏の父・慶次郎は1日全12レース的中の「パーフェクト予想」を4回達成し、「競馬の神様」と呼ばれた競馬評論家として知られる。競馬ファンも大切にしながら、時にはタブー視された競馬関係者への批判も恐れなかったという。 「平三郎さんも父も、社会や何かのための役割を果たすという姿勢が、仕事の成功につながったのだと思います。平三郎さんは一家に繁栄をもたらし、父は財産はあまり残しませんでしたが、競馬界におカネには代えられないものを遺してくれたんです」 慶次郎はちょうど25年前の'99年12月に亡くなった。父の姿を見てきた智絵氏もまた、競馬評論家として活躍している。 後編記事『池田勇人を総理にした甲州財閥、総会屋から怒号を浴びミカンを投げられても屈しなかったINAX元社長・会長……「名家」に生きた人々の「深い話」』へ続く。 「週刊現代」2024年12月21日号より
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