小栗旬×蒼井優、23年ぶり実写共演! Netflixシリーズ『ガス人間』制作決定 東宝の伝説的特撮映画をリブート
<ヨン・サンホ(エグゼクティブプロデューサー・脚本)×片山慎三(監督)クロストーク>
■ヨン・サンホ(エグゼクティブプロデューサー・脚本)×片山慎三(監督) ――ヨン・サンホさんは2018年に東宝の馮年プロデューサーと対面されて、その際に提案された題材の中から『ガス人間』を選ばれたと伺いました。どういった部分に惹かれたのでしょう。 ヨン:私は元々サブカルチャー映画が好きで、東宝の特撮映画にも興味を持っていました。そんな中、東宝さんから「変身人間シリーズ」(※)の再映像化企画を提案いただいたのです。『ガス人間第一号』は1960年の映画ですが、いま観ても非常に完成度が高くSF的な表現も巧みな素晴らしい作品でした。現代的な映像作品として新生したら、きっと面白いものになるものになると感じました。 ――その後、監督として片山慎三さんに白羽の矢が立ったのですね。 片山:当時『ガス人間第一号』の存在を知ってはいましたが観たことはなく、拝見したらとても面白くて。ガス人間という荒唐無稽なクリーチャーこそ出てきますが、そこに人間ドラマや恋愛要素が詰まっていて、非常に惹かれました。昔の特撮モノを現代のCGで新生して、人間ドラマも盛り込んだらとてもいい作品になるのではないか、と感じました。 ヨン:東宝さんから片山監督のお名前を伺い、まずは「さまよう刃」(21)を拝見しました。この作品は韓国でも映画化されていますが、片山監督バージョンが1番面白く、完成度が高いと感じました。キャラクターの感情の引き出し方やカメラワークの創意工夫を目の当たりにし、片山監督の演出力に惹かれたのです。実際に『ガス人間』の監督を引き受けていただけるかは置いておいて、個人的に彼のことが知りたくなってFacebookでメッセージを送らせていただきました。その後に『岬の兄妹』(19)『さがす』(22)を拝見し、やはりすごい監督だと確信しましたね。私が脚本を書いてはいますが、片山監督の手から新しい作品が生まれてくることをとても楽しみにしています。 ――約3年がかりで脚本を制作され、韓国で脚本合宿もされたそうですね。 片山:シーンを考えるときに、ヨンさんがその場で演じてくれるんです。1人3役くらいを兼ねて下さったのですが、その芝居がとても上手でぜひ出ていただきたいと思うくらいでした。 ヨン:私が「こういう芝居はどうですか」と片山監督に見せたら、その場でOKとNGを出してくれました。なかなか芝居にOKを出してくれないジャッジに厳しい監督だと感じましたね(笑)。 片山:いやいや、素晴らしくて「ヨンさんは芝居もできるのか」と思いましたよ(笑)。1年半から2年をかけてヨンさんと脚本家のリュ・ヨンジェさんがベースとなる脚本を書いて下さいました。それを僕が読ませていただき、何度か打ち合わせをさせていただく中で韓国で脚本合宿も行ったという流れになります。やはり、日本と韓国の文化で差異があるため、細かいところを詰めるために面と向き合って話し合う方がやりやすいだろう、ということで。 ヨン:脚本作りにおいては、韓国人である我々が日本を舞台にして物語を書くところが最初の難関でした。新しい『ガス人間』を作り出すために、日本の作品を数多く観てインスピレーションを得ようとしました。 日本のクリエイターが韓国で作業する場合と韓国のクリエイターが日本で作業する場合、それぞれありますが、情緒的な部分が異なるため、ぎこちなさを感じる場合があると思います。今回の作業では、片山監督と東宝のプロデューサーたちと脚本の小さな部分も日本ではどう感じるかについて多くの会話を交わし、それらを受け入れようと努力しました。外国人が書いた脚本ですが、日本社会で実際に起きていることのように感じていただく事が必要であると思います。そういうところは片山監督と東宝のプロデューサーから大変助けを受けました。 ――おふたりが今回の『ガス人間』の核に据えたものは、どういった部分になりますか? ヨン:原作の『ガス人間第一号』が持つ源泉とは何だろうとを長い間考えました。SFでありスリラーでもある作品ですが、その本質は先ほど片山監督がおっしゃったように人間に対するヒューマンストーリーだと思います。全編を通して人間の感情を大切に扱い、キャラクターの人間的な部分を上手く見せる必要があると考えました。 片山:自分もその部分を大事にして撮影に臨もうと思っています。あとは、現代の日本社会が持っている力の強い者と弱い者の関係性といったような社会情勢もきちんと描いていきたいです ――小栗旬さんと蒼井優さんのキャスティングについても伺えますでしょうか。 ヨン:『ガス人間』の脚本を書きながら最初に思い付いた役者さんが蒼井さんであり、片山監督にも「蒼井さんはどうでしょう」と提案しました。蒼井さんは『花とアリス』(04)で韓国でもとても有名な方ですが、近年の『スパイの妻』(20)で魅せてくれた芝居に至るまで、本当に素晴らしい方です。自分が書いた脚本を蒼井さんが演じて下さっている姿を今すぐにでも観たいくらい期待しています。 小栗さんに関しては説明不要の日本のトップスターであり、韓国でもとても有名な方です。小栗さんが『ガス人間』への参加を決めてくれた瞬間に、成功の灯がともったような感覚を得ました。実際にお会いした時も情熱がビシビシと伝わってきましたし、とても楽しみです。 片山:小栗さんと蒼井さんが実写で共演されるのは23年ぶりとのことで、この組み合わせがどんな化学反応を起こすのかはとても楽しみです。おふたりの表情と肉体の美しさをどういう風にフレームに収めていくかを楽しんで撮っていきたいと思います。 ――ヨンさんは、本作の企画当初から「アジア発信の企画で世界で勝つ」と言い続けてきたと伺いました。 ヨン:私が大学生の頃は、いま手がけているようなジャンル作品はアメリカに進出しないと作れないものだと思っていました。いまは韓国でも作ることのできる環境になり、それは日本も変わらず、昔に比べてすごく良い環境になってきた実感があります。特にNetflixというグローバルプラットフォームが生まれたことによって、アジア作品が全世界で普遍的に広がっていく土壌が出来上がりました。いまの時代にものを作っている身としては、「全世界で楽しめるものを作る」を自分たちの宿命だと思って頑張っていきたいです。 片山:世界に届きやすい時代になったのは素晴らしいことですよね。ただ自分においては、あんまり「世界」を意識しすぎて肩ひじ張ってしまうと目的を見失ってしまう気がするので、自分や関わって下さる皆さんが面白いと思うものをしっかりと追求していけば、自ずとそこに到達できると信じて取り組むつもりではあります。いま、世界で評価されているものは戦略的に狙ったというよりも、純粋に面白いものを作ろうとした結果論ではないかと。ちなみにヨンさんは毎作品グローバルヒットを成功させていますが、どこまで計算して作品を作っているのでしょう? ヨン:まずはビジュアル的な部分で魅了すること。そのうえで、作品が作られた国や地域の文化的な内面を含みつつ、人間そのものをしっかりと掘り下げて描いていることなのではないかと思っています。『ガス人間』においてもビジュアルはもちろん大事かと思いますが、それ以上に自分が期待しているのはヒューマンストーリーの部分です。この部分が上手く表現できれば、世界の方々に伝わるのではないか、と思っています。 ――本日は貴重なお話の数々をありがとうございました。今現在はプリプロダクション(撮影に向けた準備)の真っ最中かと思いますが、意気込みや楽しみにしている皆さんへのメッセージを最後にいただけますでしょうか。 ヨン:「1日も早くこの作品が観たい」という熱が高まっています。世の中にこの作品が出るまでに1年以上かかると思いますが、いま私が持っている期待感を軽く超えるくらいに、本当に多くの方々に楽しみにしていただきたいです。 片山:今回は本当に長い時間をかけて準備をしてきました。普段撮影できないようなところでも特別に許可をいただき、ようやく撮影にこぎつけたロケ場所もあります。日本の作品として、今までに観られなかった映像をお届けできるのではないかと思いますし、自分自身のモチベーションにもなっています。ぜひ期待していてください。 (取材・文/SYO) ※東宝が1950~60年代に発表した『透明人間』(54)『美女と液体人間』(58)『電送人間』(60)『ガス人間第一号』(60)等のジャンルの総称