世界的にも引き下げ相次ぐ

ただ、世界各国は被選挙権の引き下げの方向に動いています。日本総合研究所などの23年の調べによると、先進国とされる経済協力開発機構（OECD）加盟38カ国のうち23カ国（60.5％）が被選挙権を選挙権と同じ18歳以上にしています。そのほか、10カ国（26.3％）が21歳以上に、日本を含む5カ国（13.2％）が25歳以上にしています。 韓国は21年に25歳から18歳に引き下げました。22年の統一地方選では10代の候補者が道議会などの議員選挙に7人も立候補して注目されました。当選したのは1人でしたが、若者の政治参加の流れが生まれたと受け止められています。　 イギリスは06年に被選挙権年齢を21歳から18歳に引き下げました。フランスは11年に23歳から18歳に引き下げています。こうした国では若い国会議員が増えています。また、思慮や分別に欠ける若い議員の言動が問題になっているという話も聞こえてきません。 実は被選挙権引き下げについて、日本の国会でも強い拒絶反応があるわけではありません。今回の総選挙の各党の公約や政策集で被選挙権年齢に触れた箇所を見ると、立憲民主党は「衆議院は18歳以上、参議院は23歳以上に」、日本維新の会は「衆参ともに18歳以上に」、国民民主党は「衆議院議員、市区町村長、地方議員は18歳以上に、参議院議員、知事は20歳以上に」、公明党は「18歳以上に」、共産党は「18歳以上に」と具体的に引き下げをうたっています。立憲民主党や日本維新の会はすでに「被選挙権を引き下げる」内容の法案を出すところまでいっています。 自民党は今回の公約では触れていませんが、過去の参議院選挙の時には「被選挙権年齢の引き下げについて検討」などとしていました。明確に反対というわけではないようです。しかし、今回の公約で触れていないところを見ると、決して優先順位の高い政策ではないように見受けられます。 高齢化の進む日本では、有権者に占める高齢者の比率が高くなる傾向にあります。また、高齢者の投票率は若い有権者に比べて高いため、投票者に占める高齢者の割合はさらに高くなります。政治家は票のある方を向いて政治をしがちです。しかも衆議院議員の解散前の平均年齢は50歳代後半と、高齢者に近いところにあります。このため、今の日本の政治は「シルバー民主主義」とよばれることがあります。選挙権の引き下げだけでは、今のシルバー民主主義から抜け出す力はなさそうです。 被選挙権年齢の引き下げとあわせることで、若者の投票率が上がり、国会議員の平均年齢が下がることにつながるのではないでしょうか。選ぶ方も選ばれる方も高齢化している現状を憂えている人は少なくないはずで、機は熟しつつあるように感じます。きっかけさえあれば、意外に早く実現するかもしれません。きっかけが総選挙の結果になるのか、東京地裁の判決になるのか、わかりませんが、動きに注目しておきましょう。