核融合への投資が増加…テック業界のリーダーからの期待が高まる(海外)
テック界のリーダーたちは、今後10年の間に原子力がクリーンエネルギーの主な供給源になることに賭けている。 AIテクノロジー企業は、自社のデータセンターに電力を供給するために小型の原子力発電所を建設している。 しかし、核融合こそが本命であり、今そこに投資が集まっている。 テック企業の幹部たちは、AI革命の需要に応えるために原子力エネルギーの利用を推進している。 アマゾン(Amazon)からグーグル(Google)に至るまで、AIブームの最前線にいるテック大手は、データセンターへの電力供給のために原子炉を建設する企業に投資し、エネルギー提供会社と提携している。 これらの企業の多くは、ウランやプルトニウムなどの核分裂反応からエネルギーを生成している。そうして得られたエネルギーは、化石燃料よりもクリーンで、太陽光発電よりも安定している。しかし、核分裂は有害な放射性廃棄物を放出するため、それを安全に処分する必要がある。また、ウランの採掘も環境に悪影響を及ぼす可能性がある。 その解決策は核融合にある。テック界ではそう考えるリーダーたちが増えている。核融合とは、2つの原子の核を融合させてエネルギーを生成するプロセスのことで、放射性廃棄物や温室効果ガスの排出が少ないため、安全だと考えられている。 マイクロソフト(Microsoft)の共同創業者ビル・ゲイツ(Bill Gates)は、10月下旬に公開されたポッドキャスト「Possible」で、核分裂と核融合の違いを詳しく説明した。核分裂とは「ウランのような大きな原子を分裂させてエネルギーを発生させる」ことであり、核融合は「小さな原子、主に水素を結合させてエネルギーを放出させる」ことだという。 科学者たちは、核融合が実現可能であることを証明してきた。例えば、カリフォルニア州の国立点火施設(NIF)で2023年に行われた実験では、使用した量以上のエネルギーを生成するというマイルストーンを達成した。理論的には、核融合によって得られるエネルギーは、石炭や石油を燃やして得られるエネルギーの約400万倍で、しかもその過程で二酸化炭素を排出することもないとされている。しかしこれを広く普及するエネルギー源とするにはまだいくつかの障害がある。 まず、核融合に使用される水素同位体のひとつであるトリチウムは、極めて希少で高価なものであり、放射性物質であるため取扱いに注意が必要だ。 もうひとつの課題は、核融合には超高温が必要であり、それは「太陽の中心の温度に相当する数百万度」に達するとゲイツは説明した。 最近では、AIツールが核融合の実現を支援している。ゲイツが投資するCommonwealth Fusion Systemsは、10年以内に核融合システムを構築する予定だという。 「核融合エネルギーはそのうち非常に安価になるだろう。核分裂で発生するような廃棄物の問題もない」とゲイツは語っている。 ゲイツは、2023年に設立され、2024年11月に900億ドル以上のシリーズA資金調達を発表したPacific Fusionという別の核融合企業にも投資している。彼は核エネルギーを支援することでクリーンエネルギーのコスト削減に寄与できると考えている。 「核分裂や核融合には多くの投資がなされているが、それでもまだ足りない。安価な電力は社会基盤として極めて重要なものなのに」 Pacific Fusionの資金調達ラウンドを主導したのは、ベンチャー企業のGeneral Catalystだった。このラウンドには、ゲイツの気候への取り組みに特化した投資ファンドであるBreakthrough Energy Venturesのほか、シタデル(Citadel)創業者のケン・グリフィン(Ken Griffin)、Stripeの共同創業者であるパトリック・コリソン(Patrick Collison)、ベンチャーキャピタリストのジョン・ドーア(John Doerr)、マイクロソフトAIの責任者であるムスタファ・シュリーマン(Mustafa Suleyman)などの個人投資家が参加した。
Lakshmi Varanasi