「3つあります」はテレビ番組では禁じ手
2分以上話し続ける人は呼ばれない
Q:そうなると、話が長い人はテレビ番組ではやはり……。 A:はい、敬遠されます。1回の質問に対して、2分以上話し続ける人は、やがて呼ばれなくなる傾向があります。テレビのディレクターに重宝されるゲストは「安近短」です。ギャラが安くて、自宅がスタジオから近くて、話が短い。 Q:うわー、生々しい話ですね。自宅が近い人が好まれるのは、交通費が安く済むからですね。 A:テレビ局が全盛期だった時代に比べれば、どこも世知辛くなっています。番組の中で、ゲストがZoomなどを使って中継で出演する場面が増えたと思いませんか。中継には番組として2つの利点があります。1つは遠隔地にお住まいだったり、海外出張中だったりする人でも気軽に出演してもらえること。 もう1つはコストの抑制です。わざわざスタジオに来ていただかなくても、これで十分番組が成り立つことに、コロナの経験を経て、各局が気づいたのです。 Q:どこの局もシビアになっているのですね。 A:「短」、すなわち時間管理については、NHKはもっと厳しいと思います。民放に比べてリハーサルの回数が多く、残り時間を見ながら話すことが他局の番組よりも多いと聞きます。 ●テレビ番組は駅伝と似ている Q:ところで先ほどテレビの視聴率の話が出ましたが、「長い話」が数字を落とすことは、客観的に確認できるのですか。 A:はっきりと数字に出ます。テレビ局では一般に「分計(ふんけい)」と呼ぶのですけれど、放送した翌朝には、関係者に視聴率の推移を示したグラフがメールで送られてきます。それを見ると、どのシーンで視聴率が落ちて、どこで上がったか一目瞭然です。このグラフを見ていると、1人の人がスタジオで長々と話していると、まず間違いなく、グラフの線は右下へ落ちていきます。 Q:自分のコメントの善しあしがグラフで示されるというのは、シビアな世界ですね。 A:つらいですよ。ここまで偉そうなことを言ってきましたが、私自身がその課題を抱えています。
山川 龍雄