赤ちゃんの寝かしつけに「スマホの音楽」はOK?デジタル映像・音声が脳に与える影響
デジタル情報に慣れると、現実世界への勘が鈍くなる
さて、デジタル映像やデジタル音源が、脳に悪いかどうか、のお話。今や子育てアイテムも増えているので、親の悩みも増えているのだ。 デジタル映像やデジタル音源は、そればっかりで育てるのには確かに問題がある。なぜなら、脳のレンジ(認知するのに得意な範囲)がデジタル情報のそれに絞られてしまうので、現実世界に対する勘が鈍くなるからだ。
育った環境によって視覚や聴覚の指向性が決まる
聴覚は、育つにつれて、その指向性(聞こえやすい音の特性)が決まってくる。 日ごろ耳にして、内容を識別する必要のある周波数帯に鋭敏に、そうでない周波数帯のそれに鈍くなっていくのである。母語によって使う周波数帯が違うので、母語が違えば耳が拾う音も違ってくるし、育った場所の自然音にも影響を受ける。 視覚もそう。砂漠の民は、テラコッタ(赤茶色系)の色味を100色以上も見分けるという。私の友人が、サハラ砂漠で、現地の人に道案内してもらったとき、大阪育ちの彼には見えない砂漠の「模様」があるのを知ったという。 日本人には、ただ一面の赤茶色の大地に見えるだけなのに、砂漠の民は、車が走れる道を見分け、待ち合わせ場所を特定できるのだそうだ。代わりに、私たち日本人は、緑色の識別に長けていると言われている。
デジタル映像やデジタル音源は、脳に悪い?
こんなふうに脳は、日ごろ識別している情報に鋭敏になるとともに、そうでない情報に鈍感になっていく。 全方位に鋭敏だと、とっさに処理する情報量が多すぎて判断が鈍くなるので、生きる環境に合わせて、その指向性を絞っていくわけ。その絞り込みを、主に幼児期に行っていく。 電子機器を通して聞こえてくるデジタル音は、処理された信号音である。 21世紀の音響技術はとても高度で、本物の音と区別がつかないように思えるけれど、それでも、自然音(アナログ音)の持っている複雑で不規則な音声波形を、一定程度はしょっているのである。脳は、脳の持ち主が自覚しているよりずっと鋭敏なので、それがわかる。 もしも、赤ちゃんの聴覚をデジタル音にフォーカスしてしまったら、自然音の識別に鈍感になる可能性は十分にある。けれどそれは、成長期の耳にノイズキャンセル付きの耳栓を突っ込んで、自然音から遮断するような事態でしか起こらない。