500億円で買収されたFrancfranc…「海外展開の失敗」がターニングポイントに
非上場化した目的の一つである「海外展開の失敗」
上場廃止を決めた当時のバルスは、2010年1月期と2011年1月期が減収減益。経営環境が悪化していました。日本の成長余力が乏しいことを問題視しており、アジア圏への出店を強化して業績を拡大しようと計画していました。 TOBには三菱商事などが出資をし、総額158億円で非公開化を果たしました。 ところが、わずか1年後の2013年に中国からの撤退を決定。上海には2010年12月に進出し、最盛期は3店舗ありました。中国では2012年に日本製品の不買運動が激化。その影響をもろに受けたようです。 韓国にも出店していましたが、撤退を余儀なくされています。ちなみに韓国も2013年に不買運動が行われていました。 Francfrancが海外からの撤退を進めていたちょうどそのタイミングで、セブン&アイ・ホールディングスが、バルスへの出資を決定します。TOBに参加していた三菱商事の持株を取得したのです。
業績が急悪化し、名物社長が経営の第一線から…
セブン&アイはイトーヨーカドーやアリオなどのショッピングセンターにFrancfrancを出店し、シナジー効果を高めようとしていました。 潮目が大きく変わったのが2021年。投資ファンドの日本成長投資アライアンスが、出資するファンドを通してFrancfranc(バルスは2017年9月に社名をFrancfrancに変更)の株式を取得しました。株式を一部譲渡したのがセブン&アイ。 Francfrancは新型コロナウイルス感染拡大の影響により、業績が急悪化したものと考えられます。 このタイミングで、創業者かつカリスマ社長だった高島郁夫氏が引退。MBOの主体者が抜けることとなったのです。Francfrancは業績を立て直すために人員削減などを進めていましたが、名物社長が経営の第一線から身を引きました。 バルスは160億円ほどで非上場化していたため、高島氏が経営の手綱を握ってコロナ禍を乗り越え、再上場するというシナリオもあったはず。しかし、役員から外れたこの時点でIPOよりもM&Aというシナリオが色濃くなっていたのかもしれません。