「骨太の方針」新興企業支援も 埋もれる「技術」を有効活用へ 大企業では6割消滅か
21日に閣議決定された岸田文雄政権発足から3度目となる経済財政運営の指針「骨太の方針」には、斬新なビジネスで経済を活性化することが期待されるスタートアップ(新興企業)への支援も盛り込まれた。将来的に10万社の創出を目標に掲げる政府の主導で環境整備が進む一方で、経団連が中心となって大企業に埋もれた技術を事業化して切り離し、「大企業発スタートアップ」として独立させることを促す取り組みも始まる。 【表でみる】通常国会で成立した主な法律 骨太の方針では、スタートアップについて「絶え間なく生み出され、成長していく環境を構築する」と明記され、公共調達を通じてスタートアップを支援していくことなどが示された。 政府の支援継続と並行して大企業が自らスタートアップ創出を探る動きも本格化する。ホンダからは電動立ち乗り三輪を手掛けるストリーモ(東京都墨田区)が生まれ、東芝からは再生医療分野のサイトロニクス(川崎市幸区)が輩出された。ほかにも、NECやリコー、武田薬品工業などのメーカー発スタートアップがある。 ただ、まだまだ定着しておらず、経済産業省によると、大学発スタートアップが令和4年度に3782社に上るのに対し、技術をベースにした企業発スタートアップは今年4月時点で169社にとどまる。 大企業には一層の創出が求められ、経団連は月内に経産省が大企業発スタートアップ創出促進のために作成した手引書に関する説明会を開催。来月以降も先進的に取り組む大企業の事例を紹介する勉強会を開くなどし、加盟企業にスタートアップ設立を働き掛けるという。 経産省によると、国内民間企業の研究開発費の約9割は大企業が占める。一方で、大企業で事業化されない技術の約6割がそのまま消滅しているという。 事業化されない理由としては、経営戦略の変更や事業環境の変化に伴い予算が打ち切られたり、収益を上げている既存事業が優先されたりしていることなどが挙げられるが、大企業には多くの有望な技術が活用されないまま眠っている可能性がある。 競争力のある新産業育成や技術革新の実現のためにも、経営資源に比較的恵まれた大企業発スタートアップへの期待は高まる。骨太の方針が追い風となる可能性もあり、経団連の担当者は「(大企業に)行動変容を求めていきたい」と話している。(佐藤克史)