「タイレル」で親しまれた6輪ティレル「P34」がおよそ1億8000万円で落札! スペア用のシャシーで製作されても超人気でした
当時物のヒストリーがあれば、もっと高かったかも……?
このほどRMサザビーズ「MONACO 2024」オークションにて「ジョディ・シェクター・コレクション」の1台として出品されたティレルP34はシャシーナンバー「8」。当時ティレルのファクトリーで製作されたが、長らく「ピン止め」された状態のスペア用タブとして保管されていたシャシーを利用して製作されたものである。 1990年代に入ると、のちに「マクラーレンF1-GTR」とともにル・マン24時間レースでも活躍したレーシングガレージを主宰するポール・ランザンテが、このモノコックタブとそのほかのP34用パーツ一式を購入し、1992年にトビー・ビーンへと売却した。 その後、アメリカのヒストリックレース・スペシャリスト「RMモータースポーツ」社のバド・ベネットが1995年にこのプロジェクトを購入し、完成に向けて着手したのち、メキシコの新聞王にして、モータースポーツ愛好家のロドルフォ・ジュンコに売却した。 P34はその後、2008年の「モントレー・ヒストリック・ミーティング」において、1970年代にはF1レースに出場歴もあるロドルフォの息子、ルディのドライブによって優勝を果たした。さらに2年後のラグナ・セカ(モントレー・ヒストリック・ミーティング)では、今度はバド・ベネットの息子であるクレイグ・ベネットがドライブした。 そしてジョディ・シェクター・コレクションに加わったのち、このティレルP34は「カーフェスト・サウス」でも定期的に展示されてきたとのことである。 現在でも正しいスペックの「フォード・コスワースDFV」エンジンと英「ヒューランド」社製ギアボックスを搭載し、スペアノーズや多数のタイヤにくわえて、さまざまなステアリングおよびサスペンション用コンポーネントなどを含む大量のスペアパーツも、マシンとともに落札者に引き渡されるとのことだった。 ジョディ・シェクター氏のコレクションから直接販売されるこのティレルP34は、これまで製造されたF1カーの中でもっとも象徴的で、ひと目でそれとわかるもの。クラシックF1マシンの価値が高騰している現在では、非常に魅力的なオファーともいえた。 RMサザビーズ欧州本社はシェクター氏との協議のうえ、45万ユーロ~65万ユーロのエスティメート(推定落札価格)を設定。ティレルP34の人気や歴史的価値を考慮すれば、かなり安価なプライス設定にも感じられるが、それは現役時代のレースヒストリーのない、スペアパーツで組まれた個体だからと思われる。 くわえて、今回の競売においては最低落札価格を設定しない「Offered Without Reserve」としたのも注目すべきこと。この「リザーヴなし」という出品スタイルは、金額を問わず確実に落札されることからオークション会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が進むことも期待できる。ただしそのいっぽうで、たとえビッドが出品者の希望に達するまで伸びなくても、オークションを停止できないという二律背反的リスクも持ち合わせる。 そして世界のファン注視のもと、迎えた2024年5月11日の競売では、エスティメート上限を40万ユーロ近く上回る104万ユーロ、日本円に換算すると約1億7800万円という、驚きの高値で落札されることになった。 オークション公式ウェブカタログでは、権威ある「モントレー・ヒストリック・レース・ミーティング」での過去の優勝マシンであり、現時点でも「世界中の歴史的なレースイベントに出場資格がある」と謳っている。 とくに後者の出場資格が、たとえばクラシックF1レースの世界最高峰である「グランプリ・ドゥ・モナコ・ヒストリーク」などでも有効とされるならば、今回の落札者は非常に良い買い物をしたことになるだろう。
武田公実(TAKEDA Hiromi)
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