春の香りを届ける「沈丁花」 じつはタネができない?
濃厚で上品な甘い香りとともに、春を届けるジンチョウゲ(沈丁花)。目と鼻で春を満喫できる香木を自宅で育ててみませんか? 園芸研究家の倉重祐二さんに、ジンチョウゲの特徴について教えていただきました。 みんなのジンチョウゲの写真
春を告げるかぐわしい香りの低木
ジンチョウゲは、甘い花の香りで春の訪れを知らせる常緑の低木です。中国原産といわれており、室町時代中期以前にはすでに日本に伝わっていたようです。その香りの豊かさから、夏のクチナシ、秋のキンモクセイと合わせて、三大香木と呼ばれることもあります。 ジンチョウゲの花は、外側が紅紫色、内側が純白の肉厚な姿をしており、濃い緑色の葉とよく合います。ただし、花弁のように見える部分は萼(がく)が変化したものです。 特に手入れをしなくても半球状の樹形になり、庭木はもちろん、鉢植えでも楽しめます。和風洋風どちらのテイストにもよく合い、斑入りの株は花のない季節も明るく映えます。
タネができにくく、意外と寿命が短い
ジンチョウゲは雌雄異株(しゆういしゅ)といって、オスとメスの木がある植物ですが、日本ではほとんどが雄株といわれ、結実することはまれです。そのため、タネからふやすことは難しく、さし木でふやします。移植を嫌うことや、株の寿命が15~20年程度と比較的短いこともあり、大事な株は、さし木で更新苗をつくっておくとよいでしょう。 『趣味の園芸』2024年1月号で詳しい育て方を紹介していますが、耐寒性はマイナス5℃程度で、東北地方南部の平地以南なら庭植え可能です。ただし、成長してからの移植は難しいので、場所をよく選んでから植えつけます。 『趣味の園芸』2024年1月号「春を運ぶ香り ジンチョウゲの仲間たち」より