“魔法”の要らないふたりー大貫勇輔と宮尾俊太郎が語る、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』共演の喜びと見どころ
宮尾さんのドラコはスピードと美しさがダントツ
――おふたりが演じるハリーとドラコには、“魔法”を使って対決するシーンもありますね。 大貫 宮尾さんのドラコは、机に上り下りするスピードと美しさがダントツです(笑)。デュエル(対決)中のスピードも速くて、初めて一緒に稽古した時はドキドキハラハラしたんですが、ということはお客さんにもドキドキハラハラしてもらえるんじゃないかなと。 宮尾 僕は(藤原)竜也さんと最初にやった時から速かったんですよ。安全のために決まり事がカッチリあるシーンだけど、危険にならないスレッスレのスピードを狙ってた(笑)。勇輔なら絶対に同じスピードでできると思っていたら、実際にそうでしたね。というか勇輔は、“魔法”を使って表現してることも全部肉体でできちゃいそう。ひとりで側宙できるし、身体を反らせて止まれるし、そのまま床まで行ってまた戻って来るのもできる。 大貫 それは宮尾さんもでしょ? 僕ら、肉体の魔法使いだから(笑)。 宮尾 “魔法”の要らないふたり、というお声はいただいております(笑)。 大貫 ああでも、逆さまの状態で止まるのだけは、“魔法”がないと無理かな。 宮尾 いや、(少し動いてみながら)こうやってこうやればできるよ。 大貫 ああ、そうか……やれるな! 1回くらい、そういう回があってもいいかもしれません(笑)。 ――改めて、ハリーとドラコを演じる上で今、大事にしていることを教えてください。 大貫 お客さんにいかに分かってもらうか、ストレスなく集中して観て感動してもうかが一番大事なんだって、やればやるほど思いますね。 宮尾 それは俺も思う。1年目キャストと2年目キャストは稽古した時期が違うから、もちろんすり合わせはしていますけど、ズレが生じることもあるわけで。そのズレがお客さんに伝わってしまうことなく、一本のまとまった作品として見えるようにするためには、稽古の時点で大事にしてたことをいつまでも大事にするんじゃなく、その日のキャストに寄り添うことが必要なのだと思います。そのシーンの主軸にいる人をよく観察して、台詞のスピードも、勢いとか熱量もその人に合わせていく。それがロングランならではの苦しみと味わいなんじゃないかな。 大貫 そうですね、とにかく柔軟に。あと僕は、“命を燃やす感覚”も大事にしています。命を扱った作品だから、その重さと責任を感じて舞台に立っていたい。それは心が擦り減ることだから、舞台に立っていない時間で心を癒やすこともそうですけど、笑いのシーンで心を軽くすることも大事にしてますね。笑いのシーンは、まずお客さんにとって、このシリアスな話を楽しんで観るために必要なものだと思いますが、僕らにとってもそうなんです。 宮尾 うん、だからぜひ、声を出して笑ってほしいよね。笑い声が聞こえると心が軽くなるから、もちろん無理して笑う必要はないですけど(笑)、我慢はしないでほしいなと思います。たまに小さなお子さんが笑うとシーっとなだめる大人の方を見かけますが、『ハリー・ポッター』はそれをしなくていい舞台。皆さんの笑い声に、僕らはいつも助けられています。