新卒採用の適性検査 入社後の人材定着にも使わなければもったいない
人間は大きく、感覚的な人と論理的な人に分かれると思います。「目標達成のため、みんなで頑張っていこう!」というスタイルを好む人もいれば、「こうしたことを成し遂げるには、具体的にこういうロジックで進めよう」と指示されたほうがスッと入る人もいます。 適性検査の結果から、今回新しく入ってくるメンバーにはこんな特徴があり、どのように関われば、コミュニケーションを取りやすい、といったことが分かります。この人は前者のタイプだから、同じタイプの上司がいるこの部署に配属するといった工夫をすれば、配属先のミスマッチを減らせるでしょう。 配属される前に、上司が検査結果を見て、どういうコミュニケーションを取ると、お互いストレスがないかを確認しておくこともできます。マネジメント側も新人がどんなタイプか分かっていたほうが接しやすいですよね。人事から「今度、配属になる○○さんは適性検査でこういう結果が出ているから、マネジメントをするときにこうした点に注意してもらえるといい」などと伝えておくのもいいでしょう。 ここまでは人材の定着に関わる話でしたが、適性検査は入社後の活躍の指標としても利用できます。 ●採用時に評価が高い人材は、入社後も評価が高い? 最近、「ピープルアナリティクス」に注目が集まっています。ピープルアナリティクスとは、従業員に関わる様々なデータを集めて分析し、人事領域における施策などに生かす手法のことです。 これまでどちらかと言うと、人事施策は人事担当者の経験や勘に依存していた部分もありました。しかし、属性データや行動データなどが収集・分析できるようになった今、これを活用して精度の高い人材マネジメントを実現しようという動きが高まっているのです。
最近、採用時の評価と入社2年後、3年後の評価がどう連動するかをチェックする企業が増えています。その分析対象となるデータとして、適性検査の結果が活用され始めています。採用時の適性検査の点数はどうだったか、面接の評価はどうか。入社の時点での評価、その後の仕事ぶりはどうか。 もちろん入社後の配属先、上司との関係、業務内容など様々な要素が絡み合った結果ではあるものの、採用時点での評価と今がどうつながっているのかを調べ、採用基準に反映させている企業もあります。 ●ハイパフォーマー社員の共通点を探す 私が人材会社で営業をしているとき、適性検査の結果10人分をずらっと並べて「どの人を採用すればいいですか」と聞かれることがありました。その時、私は「当社にはこれだという基準はありません。この点数以上の人がいいとか、こういう性格の傾向の人がいいというのは企業によって違います。まずはその基準をつくりましょう」と答えていました。 適切な採用基準をつくるには、社内でハイパフォーマーといわれている10人ほどの社員の共通点を探すという手があります。まずはハイパフォーマー社員の適性検査を確認し直す、もしくは再度、適性検査を受けてもらってもいいでしょう。 適性検査の結果を選考のジャッジに使うだけではもったいない。もっと有効活用する方法を考えていくといいと思います。 (構成=荻島央江)
谷出 正直