コーヒーミルから感じた工業製品の精度 じつはバイクに使われている技術はとんでもないものなのでは!? バイク乗りのコーヒー屋デイドリップ通信VOL.10
豆をカットしながら小さくしていくので、切断面の組織も潰れず、湯が浸透しやすくてエキスも抽出しやすい粉になります。つまり美味しいコーヒーが淹れやすくなるんですね。
でもキレイな挽き目のためには、もう一つとても重要なことがあります。それは軸がブレないことです。コーヒー豆がカットされるのは、ハンドルから伸びるシャフトに付いた回転刃と、ボディ側に付いた固定刃の隙間に豆が噛み込んでいって小さくなります。でもシャフトがグラつくと刃の隙間が一定にはならないので、粒度が揃わないんですね。 このミルはシャフトにベアリングを用いることで、軸がブレず、かつスムースな回転となるので、挽く時の力も少なくて済みます。試しにシャフトの部分だけ指先で摘んで回してみると、クルクルクルッと空回りしました。
様々な工業製品に込められたすごい技術
ミルをぼーっと眺めていて、ふと思いました。これは「理にかなった設計」を元に、「最適な材料(&熱処理)」を用いて、高い「加工精度」で作られているのでは? と。
それはヤマハのイベント『My Yamaha Motorcycle Day 2024』の会場で見たバイク部品の開発の様子と共通する感覚でした。あぁそうか、例えば回転する構造を最適化しようとすれば、ミルにせよバイクにせよ、どちらも同じ様なところに向かうのかもしれない。そしてより高みを目指して高度な技術と高精度な製品を作り出す……。 そう考えるとバイクのエンジンなんて想像を絶するもので、ピストンとシリンダーのクリアランス一つとっても、実はヤバいレベルなのだと思えてきます。熱膨張もしているはずなのにちゃんと動くって、何かもう神の領域です。
コーヒーミルの話がなんだか壮大な内容になってしまいましたが、僕たちの日常の中にある様々な工業製品は、どれもその向こう側にもの凄い技術や人や世界が隠れていて、その恩恵の上で暮らしているのだということに、あらためて感動してしまいます。 何しろ僕は、コーヒーを淹れてバイクを走らせることが出来ても、そこに使われているネジ一つ作ることが出来ないのですから。
黒田悟志