MRJ失敗でも…航空機開発にこだわる政府 官民で4兆円投資 “2050年に向けビジネスチャンス” “安全保障の強化”も?
政府は27日、次世代の国産航空機開発などに向けた新たな戦略を取りまとめた。水素燃料など、脱炭素社会にも対応した次世代の国産航空機を、2035年以降に開発するとの目標を掲げている。政府は今後、開発のための研究費用などを幅広く支援する方針だが、国産旅客機開発をめぐっては、一度失敗に終わった経験も。政府はなぜいま、“国産航空機開発”にこだわるのか。その《ワケ》は。
■《ワケ1》2050年、航空機の脱炭素化…私たちが乗る航空機も“変わる”
航空分野では現在、脱炭素をめぐる議論が急速に進んでいる。特に、2022年10月には、国際民間航空機関=ICAOにおいて、2050年に二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするなどの目標が掲げられた。日本もこれに応じるかたちで、2050年までに、航空分野でカーボンニュートラルを達成させると国際的に宣言している。 つまり2050年までに、水素燃料など、脱炭素社会にも対応した次世代の航空機開発が求められている。いわば、いま私たちが乗っている“従来型の航空機”の変革が迫られているのだ。 政府は、こうした環境の変化を航空機産業の「成長の機会」ととらえている。しかし、日本の航空機産業は、機体の装備品やエンジン事業の一部への参入にとどまっている現状があるという。 つまり、航空機産業全体が大きな変化を迎え、ビジネスチャンスがあるにも関わらず、このまま何の手も打たなければ、日本の航空機産業自体が衰退していく可能性があるワケだ。
■《ワケ2》MRJの失敗「日本だけで設計・開発」からの戦略変更
そもそも国産旅客機の開発をめぐっては、三菱重工業が2008年から、国産初のジェット旅客機=MRJの開発を進めていた。しかし、度重なる計画変更などにより、去年、撤退に追い込まれている。 政府はこれまで、新たな航空機産業戦略を打ち出すにあたり、MRJの失敗の経緯を検証してきた。その要因として、「安全認証プロセスの理解・経験不足」や「海外サプライヤー対応の経験不足」など、4つの点をあげている。 特に、MRJは、国産初のジェット旅客機開発ということもあり、実績のある装備品を搭載するため、エンジンなどの主要部品について、そのほとんどを海外からの供給に依存していた。 にも関わらず、政府関係者によると、旅客機の設計や開発を“日本だけで達成したい”との思いも根強かったという。そのため、豊富な機体開発経験のある海外人材などの確保に遅れを取ったほか、海外の取引先との契約などでタイムリーな連携に失敗し、計画変更が多発した。 結果、海外の供給先から必要な協力を確保できず、コストやスケジュールの管理が困難となり、最終的に開発を中止せざるを得ないかたちとなった。