ビール税の引き下げはなぜ望ましいのか、消費者目線で考える
第3のビールとしては販売中止に追い込まれたサッポロビールの「極ZERO」が、発泡酒として再販売されました。約20円高い価格で販売されるとのことですので、ほぼ税額分が価格に上乗せされたことになります。これに着目したキリンビール、サントリー酒類、アサヒビールの大手ビールメーカー3社が同様のコンセプトの発泡酒の発売を9月に計画しているとのニュースもありました。 ビール税の引き下げも議論されるようですが、私は賛成です。もし、発泡酒や第3のビールの税が増額されてもその方がよいでしょう。ビール系飲料への課税が種類によって異なるのは、消費者の立場からの問題もあります。 350ml缶あたり課税額は、ビールが77円、発泡酒が47円、第3のビールが28円です。そこから課税前価格を求める(2014年7月16日の日本経済新聞社より)と以下のようになります。 ・ビール 143円 (=小売価格 220円-税額77円) ・発砲酒 113円 (=160円-税額47円) ・第3のビール 112円 (=140円-税額28円) それでもビールがやや高いのですが、どの種類でもあまり違いがありません。 ところが、ビール系飲料のシェア(大手5社)をみると(2014年1月16日ロイター記事より)、ビールが50%、発泡酒が13.5%、第3のビール36.5%であり、さらに第3のビールは9年連続で前年比プラスとなっています。ここでもビールがシェアが50%と一番大きいのですが、逆に半分しかないとも言えます。ビール好きのあなたが家で飲むときに、3つのビール系飲料が非課税だとしてどれを選ぶでしょうか。 ここからは経済学の問題です。 どのビールを選ぶかはそれぞれの人の好みや所得、そして3つの種類のビールの価格の違いによって決まります。その指標として価格弾力性、すなわち価格の変化に対してどの程度需要が変化するかというものがあります。 課税後の価格が相当高いのにもかかわらず、ビールのシェアが50%に維持されているのは、価格弾力性が小さく、高くてもビールを選ぶ人が多いからです。あるいは、居酒屋など外で飲む場合にビールを選ぶ人が多いためです。一方で、発泡酒と第3のビールの価格弾力性は大きいと思われます。そのため、第3のビールよりも“少しだけ”価格の高い発泡酒のシェアは13.5%とずいぶん小さくなっています。