6月中旬から粗摘果を 品質、安定生産に影響 奄美大島タンカン
奄美かんきつのエースに位置付けられるタンカンは6月中旬から、玉肥大や果皮障害など等級比率を決定する上で重要な比重を占める栽培管理「粗摘果」が始まる。鹿児島県奄美市名瀬の奄美大島選果場に共販出荷された2024年産タンカンの販売実績をみると、摘果の差が等級比率に表れ、生産地によって販売額に大きな開きが生じている。摘果の有無は農家所得に加え、翌年以降の生産量にも影響を与えるとして、関係機関は適切な管理を呼び掛けている。 摘果は樹木の中心部や地面に近い裾部など太陽の光が当たりにくく、育ちにくそうな果実や小さい果実を間引く作業。粗摘果は2~3月の収穫期以降で最初に行う摘果で、果実1個に十分な栄養分を与えるために量を調整するほか、果実同士の摩擦による果皮障害などを防ぐ効果もある。 JAあまみ大島事業本部によると、共販出荷した24年産タンカンのキロ単価は秀品882円、優品591円、良品400円、規格外品118円。同事業本部7支所平均の等級比率は秀品17・7%、優品29・2%、良品31・6%、規格外品21・6%で、1トン当たりの平均販売額は、前期比で6万3068円増の48万307円だった。 支所別で1トン当たりの販売額が最も高かったのは大和の56万1641円。以下、住用48万8995円、瀬戸内46万7901円、名瀬46万7702円などと続き、龍郷は32万7640円で最も低かった。 大和は7支所中トップだった秀品割合30%が販売額を押し上げた。対照的に龍郷は規格外品が全体の半数を占めたことで、販売額が伸び悩んだ。 奄美大島各地のほ場を巡る大島事業本部果樹指導員の大山綱治さんは「大和は粗摘果から収穫前の樹上選果に至るまで、しっかりと管理ができている」と分析。他地域については「生産者の高齢化などもあり、摘果ができていない園地がある」と現状を語る。 県大島支庁農政普及課技術主幹兼技術普及係長の松尾至身さんは、摘果不足による影響について「栄養分が分散されることで小玉傾向になる。また着果過多によって木に負担がかかって樹勢が衰えるため、隔年結果を引き起こして生産量が安定しなくなる」と指摘する。 樹勢の衰えは病害虫への抵抗力が落ちるほか、落葉にもつながる。病果発生で商品性が落ちたり、最悪の場合木が枯死したりする事例も。大山さんは「商品価値を決める上で、粗摘果の果たす役割は7~8割を占める。樹勢に与える影響は、数年先の生産量にも大きく関わる」と荒摘果の徹底を呼び掛けている。 同事業本部は10日から、奄美大島5市町村でかんきつ管理講習会を開き、夏季の基本管理や摘果に関する指導を行う。生産者の参加を求めている。