軍事誌発の「伝説の航空機本」が“復刊”で、いま「静かなブーム」なワケ
航空ファン必見のイラスト作品集がこのほど復刊され、静かな話題を呼んでいる。『Nobさんの飛行機画帖 イカロス飛行隊』(潮書房光人新社)がそれだ。 【写真】「伝説の航空機本」、その“スゴすぎる中身”…! 「ヒコーキ画伯」として戦後の航空機イラストを牽引したNob(ノブ)さんこと、下田信夫氏(1949~2018年)が、その持てる愛情とウンチクを傾けた「全400機で辿るイラスト世界航空史」。イラスト入門としてだけではなく、予備知識なしでも楽しめるガイドブックとして知られる。 そんな知る人ぞ知る作品が復刊されるうえ、全4巻が順次刊行される予定とのことで、発売前から航空ファンはもちろん、アニメ好き、メカ好きなどなど、さまざまな「推し」たちから注目が集まる“異例の話題作”となっている形だ。 世界に誇るあまたのイラストレーターを輩出した「漫画大国」日本のレジェンドが描く、航空ワールドの“真骨頂”とは――その「秘密」を版元に聞いた。
ディープすぎる「博覧強記ぶり」
『Nobさんの飛行機雑記帳 イカロス飛行隊』は、軍事雑誌「丸」で2007年1月号から2015年10月号まで掲載された連載のうち、最初の28回分をまとめたものだ。 前シリーズ作『Nobさんの飛行機グラフィティ』では触れなかった、よりディープな航空機と航空史のエピソードが満載である。さらに、歴史的名機から誰も知らない珍機・迷機まで、そのメカニズムと特徴を事細かに紹介するとともに、数奇な運命にまで言及し、その博覧強記で著者の右に出る者はいない。 本書で特徴的なのは、航空機とともにそれを操って限界に挑んだ「鳥人」たちにスポットを当てていることだ。
真骨頂は「立体感のあるデフォルメ」
とくに航空黎明期から登場する女性飛行士たちの活躍が、彼女たちが駆った魅力的な機体とともにノブさん独特のラインで描かれる。 ここからは、航空業界は女性活躍社会の先行事例でもあったことがわかる。ドラマになりそうな女性飛行士たちが目白押しなのだ。 余談ながら、巻頭のカラーイラストは単行本のために描き下ろされたもの。いずれも美しい水彩画だが、それぞれノブさん流の「ネタ」が仕込まれているから、よく注意してじっくり見ると“発見”できるかもしれないという楽しみもある。 そもそも、航空機設計者たちからも愛されたノブさんのイラストの魅力とは何か。 本人曰く、その真骨頂は「立体感のあるデフォルメ」だ。 航空機を戯画的に描く作家は多いが、ムード優先で機体が変にねじれていたり、翼と胴体のつながりがどこかおかしかったり……。しかし、ノブさんの絵は決してそんなことはない。 どんなにデフォルメされていても、どの角度で見ても、ちゃんとつじつまがあっているのだ。 また、ライト・フライヤーから最新のステルス戦闘機まで、どの時代の航空機でも、機体の全体の特徴が一目でわかると同時に、タイプ別の細かな差異もしっかりと描き込まれていて、飛行機初心者から相当なマニアまで納得させる。