夢を他人とシェアすることってできるの?
夢はそれまでの記憶や経験に起因する
ハーバード大学医学大学院の精神医学の教授で、睡眠について研究をしているロバート・スティックゴールド氏。彼は、夢の共有について、このように語ります。 少なくともこのサイトを読む皆さんが生きている間には、夢の共有は不可能でしょう。 考えてもみると、「自分の考え」を、完璧に共有すること自体ほとんど不可能です。例えば、会話が始まると、いろんな話題が頭の中に生じては、そのうち一つを選択して話しています。ここで思い浮かんだ話題も全て「自分の考え」の一部です。 しかし、現在では、完全に目が覚めた状態の人でさえ、fMRIスキャナーで何を見ているかを判別するのが精一杯でしょう。 より哲学的なレベルでは、夢や考えというモノは、全体的な記憶や人生の経験に起因しています。他者と表面的に同じアクションをしても、その人と同じ経験や考えを得られるわけではありません。 やはり、近いうちでの夢の共有は実現しないと考えます。
同じことをしても得られる経験は人それぞれ
MITメディアラボのリサーチアシスタントで、脳科学を研究しているアダム・ハー・ホロウィッツ氏。彼の意見は以下の通りです。 夢の共有は可能か?多くの科学がそうであるように、この疑問は更なる疑問への扉です。夢を共有するためには、夢を定義し、その形を明らかにする必要があります。 夢を定義するのは視覚なのか、共有する夢とは視覚情報なのか。もしそうなら、私たちの心に同時に同じ人物のイメージが浮かんだ時、それは夢を共有していると言えるのでしょうか。 私の考えでは、それは夢を共有しているとは言えません。夢は記憶の集合体であり、それは常に個人的なコンテクストに由来する概念です。したがって、二つの心に同じ感覚的な刺激があったとて、それは各々で全く異なる経験かもしれません。 同じソファで、同じ映画を見ている時でも、相手と同じ映画体験をしているかは、わからないということです。哲学的に、なかなかややこしい質問ですね。 とはいえ、実際にはそれほど難しい問題でもありません。 脳の画像を使って、夢の映像を解読するという技術は現在研究されています。さらに、他の研究では、眼球の動きを使って、明晰夢を見ている人と、意識の状態を超えてコミュニケーションができることが示唆されています。Fluid Interfacesというグループの研究では、特定のテーマの夢を見ることができると示されています。表面的には夢の世界と外部の世界の距離は縮まりつつあるのです。 しかし、科学者が、夢を捉え、観察し、再現するような客観性のあるツールを作り出しても、夢を完全に理解するには、主観的な「経験」や「自己」を明らかにする必要があります。夢を共有するには、私たちの自分自身の全てを共有しなくてはならないのです。