「社長&行政書士&宅建士で頑張ります!」元なでしこジャパンMF・阪口夢穂の意外なセカンドキャリア
「サッカーは努力が報われないことのほうが多いじゃないですか。たとえば自分が居残りで毎日1時間練習したとしますよね。でも、いざ試合になったら、それが生きるか? 敵もいて味方もいて、その日のコンディションもあって、天候も関係する。その努力が報われるかどうかって本当にわからない。でも、勉強はやればやるだけ結果がついてくる」 【画像】阪口夢穂・元なでしこジャパンMFの意外なセカンドキャリア サッカー女子の″なでしこジャパン″といえば、なんといっても’11年の『FIFA女子ワールドカップ』の優勝が感慨深いが、この時のチームで不動のボランチを務めていたのが阪口夢穂(みずほ)(37)である。阪口はプロサッカー選手を引退後、女性実業家としてセカンドキャリアを歩み始めている。取得した資格は8種類。その中には合格率約12%の行政書士や宅地建物取引士など、難易度の高い国家資格も含まれる。 ’22年6月に『大宮アルディージャVENTUS』を退団後、阪口は石油などの油種を運搬する家業の『融星運輸株式会社』に役員として就任。昨年10月からは実兄に代わって代表取締役を務める。資格を取得し始めた経緯を聞くと、家業の承継がスタートだった。 「サッカーを辞めた後、『家業で役員します』ではちょっと違うなと思ったので、自分の決意を証明するために武器を揃えたんです。それが大型自動車免許、けん引免許、乙種第4類危険物取扱者でした」 実は大宮を退団後、いくつかのチームからオファーも受けていたが、阪口は去就を明言せずにいた。昨年4月、開設したばかりのXで突然引退に言及してサッカー関係者を大いに慌てさせている。 「引退となれば周りがちょっと騒がしくなるじゃないですか。だから、別に言わんでもええかなぐらいの考えだったんですよ。ただ、トークショーとかの仕事を受けるにあたって『いま何されてるんですか』と尋ねられると、肩書がむずいなと思って。サッカーをやってもないし、それで発表しました」 6歳からサッカーを始めて、’06年には18歳という若さで日本代表に選出。同年7月のベトナム戦で代表デビューを飾ると2得点を挙げ、大活躍。’11年には女子W杯ドイツ大会で優勝、翌年のロンドン五輪でも銀メダル獲得に貢献する。なでしこリーグでは’15年から3年連続で最優秀選手賞を受賞。日本代表としては124試合に出場し、歴代でも7位の記録を刻む。こうして経歴を書き連ねるだけでも日本サッカー界のレジェンドとも言える実力者だが、セカンドキャリアで指導者という道はまったく頭になかったという。 「いろんな資格を持っているのにサッカーの指導者のライセンスは持っていないんです。先日も澤(穂希・46)さんとイベントで岐阜に行ってきたんですけど、サッカーを教えるというよりは普及が目的でした。イベントのオファーが来ると、『教えるのは苦手なので、別の指導者の方を呼んでもらえれば、私は場を盛り上げます』と伝えてます。子供たちと一緒に遊ぶのはできますから(笑)」 ◆行政書士、宅建に一発合格! 家業のため、免許を取得すると学ぶ楽しさを見出して新たなる活力も生まれた。それが士業へのチャレンジで、’22年11月に行政書士の試験を初めての挑戦で合格すると、翌’23年10月に挑んだ宅地建物取引士の試験も再び一発合格。今年に入ってからもファイナンシャル・プランニング技能士の3級と2級を立て続けに取得した。 「とくに勉強ができたとか、そんな事もなくて、(当時の)先生たちもむっちゃ驚いてると思いますよ(笑)」 XのDMには勉強の仕方についての質問が頻繁に届くという。短時間の学習で暗記するのは、一流アスリートが持つ圧倒的な集中力がなせる業(わざ)かもしれない。 「スキマ時間を使って勉強してましたね。短期集中型やから、毎日、2時間もしなかったと思います。極端な話、15分とかガッと勉強して終わりの日もありました。だから、友達との食事も普通に行ってましたし、大好きなあんこの和菓子を食べに行ったりもしてました」 現役引退後も、W杯で優勝を味わったメンバーたちとはいまだに懇意だ。澤や丸山桂里奈(41)、宮間あや(39)のほかに先日、現役引退を発表した鮫島彩(37)とも交流は続いている。資格を多数保有する女性実業家のイメージが、なでしこジャパンでも定着した。 「最近、インテリキャラと呼ばれてます。皆、騙(だま)されてますけど、まだバレてません(笑)。凄い、凄いと言われますけど、やっていないだけで勉強をやったらみんなできると思います」 代表では手強い相手と対峙する場面も多々あった。身体能力で敵わないと思えば一人で挑まない。簡単に剥(は)がされないためには、「仲間と連携し、真っ向勝負は挑まないことも重要だった」と明かす。 「自分を一番活(い)かせる道を探すとサッカーでは澤さんの隣にいることでした(笑)。澤さんは『自分が活かされてた』って言ってくれるんですけど、『私のほうが活かされてましたよ』って、毎回会うたびに言ってます」 今年7月には村井満前チェアマン(65)を通じ、不動産会社『フィル・カンパニー』と個人的に業務委託契約を結んだ。阪口は広報や営業補佐、人事補佐などを担当。飽き性という性格を見抜かれ、さまざまな部門での活躍を期待されている。 阪口はビジネスパーソンとなった今も、自らが活かされるポジションを奪って鋭い縦パスを送り続けている。 『FRIDAY』2024年11月1・8日合併号より 文・写真:加藤 慶
FRIDAYデジタル