首相の靖国神社参拝、なぜ問題になるの?
靖国神社を日本の首相が参拝するとなぜ議論になるのでしょうか。主な論点をざっくりまとめました。 靖国神社は明治維新翌年の1869年、新政府軍と旧幕府勢力が戦った戊辰(ぼしん)戦争の犠牲者を悼むために東京に建てられました。現在では日清、日露、第二次世界大戦などの戦争で犠牲になった軍人ら約247万人がまつられています。戦前は陸軍省と海軍省が共同管理し、国家神道の柱になりましたが、戦後は国家神道の廃止に伴い、靖国は一般の宗教法人になりました。
「政教分離」と「A級戦犯の合祀」
政治指導者の参拝をめぐっては2つの大きな論点があります。 1つ目は憲法が定める「政教分離」の原則に反するかどうかです。憲法20条は政府が宗教活動に関与することを禁止しています。靖国神社という一宗教法人に首相が参拝することは宗教活動に当たるのではないかという指摘があります。 1975年、三木武夫首相は首相として初めて終戦記念日に靖国を参拝。終戦記念日という特別な日だけに注目されました。この時は「私人」として公用車を使わず、玉串料を私費で払いました。私的参拝なら憲法上の問題はないという判断でした。中曽根康弘首相は85年、宗教色を薄めて「公式参拝」に踏み切りました。この参拝が注目を集めた結果、2つ目の論点が浮上します。 2つ目の論点とは「A級戦犯の合祀(ごうし)」です。A級戦犯とは、太平洋戦争を指導し、極東国際軍事裁判(東京裁判)で重大戦争犯罪人として起訴された人のこと。靖国神社は78年、A級戦犯28人のうち東条英機元首相ら14人をまつりました。247万人のうちわずか14人ですが、A級戦犯を合祀した神社を首相が参拝するのは「侵略戦争を正当化する」と、中国や韓国が反発し始めたのです。 こうして中曽根首相の公式参拝以来、首相や閣僚による靖国参拝は外交問題にもなっています。 Photo under Creative Commons license (CC BY 2.0)