ドコモがLTE-Advancedを発表、技術的な特徴を分かりやすく解説
データ通信の高速化の目的は、混雑エリアにおける快適性の確保
こうした最新技術の投入によって、LTE-Advancedは持て余してしまうのではないかと思う程の高速データ通信を実現しますが、そのメリットはただデータ通信が速くなるというものだけではありません。混雑エリアのデータ通信の快適性を高めるという大きなメリットがあります。 例えば、現在多くの人が使っているLTEで、受信時最大150Mbpsという理論上の最高速度を実際に体験した人はいないのではないでしょうか。それは、基地局が発信する電波を、同じ時間にその基地局と通信しているほかのユーザーと基地局の能力=実現できるデータ通信速度を共有しているから。大都市の駅周辺など多くの人が集まる場所では、同時に電波を利用する人が多すぎるために、ユーザーひとりが利用できるデータ通信速度はどんどん低下します。携帯電話のデータ通信が「ベストエフォート型」と呼ばれるのはこのためです。携帯電話会社では、この電波混雑による通信速度の低下を解消するために、基地局を混雑エリア内に細かく配置して、基地局ひとつあたりの利用ユーザー数を下げる努力を続けてきました。 しかし、今後更にユーザーのデータ通信利用が拡大すると、現在のLTEの能力ではニーズを処理しきれなくなってしまいます。そこで、キャリアアグリゲーションや高度化C-RANアーキテクチャといった技術によって通信インフラが持つ理論上の性能を高め、混雑しているエリア内でもユーザーが不便に感じないデータ通信速度を提供していこうとしているのです。もちろん、理論上の最高速度が上がることで、高解像映像のリアルタイム配信などモバイル通信の利用シーンの拡大も期待できます。しかし重要なのは、これからのデータ通信ニーズに対応できるだけのキャパシティを備えた通信インフラを整備することなのです。 ちなみに、ドコモのLTE-Advancedは3月27日に開始しますが、開始時の対応端末はモバイルルーターのみで、対応スマートフォンの登場はもう少し先になる予定とのこと。そして、KDDIやソフトバンクモバイルも今後LTE-Advanced のサービスを本格的に導入していくことになるでしょう。LTE-Advancedの登場によって、混雑する繁華街や駅、電車の中などでどれくらいデータ通信が快適になるのか、その効果に期待したいところです。 (井口 裕右/オフィス ライトフォーワン)