荷物の30%運べなくなる時代に 「物流の2024問題」はドライバーだけの問題じゃない
食品や日用品など私たちが手にしているものは、誰かがどこかから運んできたものです。しかし、2024年4月からトラックなどのドライバーの残業が規制され、これまでと同じように荷物が届かなくなる可能性があります。人手不足に加え、物流業界ならではの商慣習が問題を複雑にし、業務の効率化も根本的な解決にはつながっていません。これから何が起きるのか。 【写真で見る】「物流の2024問題」はドライバーだけの問題じゃない
ドライバーの憤り
長距離トラックのドライバー 「寝ているだけでもお腹すきますよね。じゃあお腹すいたら食べもん誰かが運んでいるんですよ。その誰かが運んでるのを、なんで日本のトップは止めようとすんねん」 こう憤るのは、大阪から九州へ荷物を運ぶ長距離トラックのドライバーです。
運送業界も残業時間が制限される
2019年から順次施行されている働き方改革関連法。運送業は5年間の猶予期間が設けられていたため2024年4月から適用となります。残業時間が年間960時間、ひと月あたり平均80時間に制限されます。
約30%の荷物が運べなくなる?!
毎日、全国各地を行き交うトラック。私たちの生活に欠かせないあらゆるものを運んでいます。野村総研の推計によると、労働時間の制限により、2025年、全国で28%、九州では31%の荷物が運べなくなるとみられています。
「対等に交渉できない」商習慣 長時間労働の温床に
福岡県トラック協会・二又茂明会長 「全産業の業界の中で、過労死が一番多いということです。だから時間外労働時間の上限を設けないといけない」 福岡県トラック協会・会長の二又茂明さんは、物流業界の働き方改革には理解を示しています。その上で、「荷主に対して対等な営業交渉ができない」運送業界の慣習が、長時間労働の一因になっていると指摘します。
荷待ち時間をどう考えるか
福岡県トラック協会 二又茂明会長 「『荷待ち時間』といって、運転している時間ではないけれど、拘束時間ですから労働時間になりますので」 二又さんが指摘するのは、いわゆる「荷待ち時間」の問題。荷物の持ち主・送り主や物流施設の都合によってドライバー側が待機している時間で、荷物の積み下ろし待ちや指示待ちの時間も含まれています。 ドライバー側でコントロールできない時間です。 現在は多くの会社がこの「荷待ち時間」もドライバーの労働時間としてカウントしています。 しかし、2024年4月以降は、労働時間にカウントしない会社が出てくるかもしれないほか、労働時間にカウントした場合には、トラックで運べる時間が減ってしまう、つまり物流が滞ることが懸念されているのです。