【有馬記念直前スペシャル対談】吉井理人監督&本城雅人氏が語る“本当の武豊”「バーで飲んでいて椅子からで“落馬”寸前」「メジャーリーガーとしてサイン」
今年も競馬の夢の祭典「有馬記念」が近づいてきた。そこで、名手・武豊騎手とも交友の深い千葉ロッテマリーンズ監督の吉井理人氏と作家・本城雅人氏が対談。2人が武豊騎手のエピソードについて語り合った。【全3回の第2回】 【写真】大観衆が酔ったオグリキャップ“伝説のラストラン”。1997年の有馬記念を制したシルクジャスティスも
本城:サンスポの競馬記者時代、吉井さんには秋のGIの予想コラムをお願いしましたよね。 吉井:全然当たらへんかったな(笑)。 本城:僕は武豊騎手や明石家さんまさんのコラムも担当していて、雑誌『Gallop』でも競馬好きの方の対談などを担当し、プロ野球選手と騎手をお引き合わせすることも多くなった。 吉井:ジョッキーと話してみていろいろわかりました。競馬って馬任せみたいな部分が多いのかなと思っていたけれど、けっこう戦術をたてているのが印象的でした。 本城:そこにジョッキーの力量の差が出るんでしょうね。武さんとかはいくつもプランの引き出しを持っている。 吉井:ところがプライベートの武豊を見ていると、この人の馬券を買っていいのかどうか、あまり信用できないなと思ってしまう(笑)。 本城:調子よく飲んでて、バーのカウンターの椅子から“落馬”しそうになったり。 吉井:僕はお酒を飲まないので、いつも帰るまでお守りしていました。 本城:野球がシーズンオフになると、日曜日の夜はジョッキーや若手調教師たちに、野茂さんや赤堀元之さんなんかも交えて食事会をしていました。 吉井:幸英明騎手とはとくに仲良くなりました。彼は関西で乗っていても夜だけ東京にやってくることもあった。
「メジャーリーガー武豊」のサイン
本城:吉井さんがアメリカにいった後、僕は会社の留学制度に合格してニューヨークに行けることになった。そうしたら、この年、武豊騎手がロサンゼルスに拠点を移した。 吉井:僕はニューヨーク・メッツから、コロラド・ロッキーズにトレードになったんですが、ロサンゼルスでドジャースと試合がある時に、武騎手と本城さんも試合を見に来てくれましたね。 本城:武さんにもサンタアニタ競馬場を案内してもらいました。吉井さんは有名人だったから、ジョッキールームにも入れてもらえて。 吉井:ジョッキーがビリヤードなんかやっていて、メジャーのクラブハウスに雰囲気が似ていると思いましたね。 本城:その後、3人で現地の居酒屋に行ったら、店の人が吉井さんを見つけてサインしてくれって色紙を持ってきた。 吉井:それで、僕が店の人に武騎手のことを、「彼も有名人やで」と言って。 本城:その店員が、「あなたもメジャーリーガーか?」って訊いたら、武さんは「イエス」って(笑)。店員がもう1枚色紙を持ってきて、ポジションはどこだって聞いたら……。 吉井:ショートやって言うてたよ(笑)。 本城:その店には「メジャーリーガー・ショート武豊」のサインが残ってたりして。 (第3回へ続く) 【プロフィール】 吉井理人(よしい・まさと)/1965年、和歌山県生まれ。1984年に近鉄入団、1995年のヤクルト移籍後は2度の日本一に貢献。1997年オフにFA権を行使してメジャーリーグのニューヨーク・メッツに移籍。日米通算121勝62セーブの成績を残し、2007年に引退。2022年オフに千葉ロッテマリーンズ監督に就任、2023年シーズンより指揮を執る。馬主としてこれまで6頭の競走馬を所有。 本城雅人(ほんじょう・まさと)/1965年、神奈川県生まれ。スポーツ新聞記者、競馬雑誌デスクを経て、2009年に『ノーバディノウズ』で作家デビュー。2017年、『ミッドナイト・ジャーナル』で吉川英治文学新人賞受賞。2018年、『傍流の記者』で直木賞候補。著書多数。2025年3月には元ジョッキーを題材にしたミステリー『灯火』を出版予定。 ※週刊ポスト2024年12月27日号