「老後2000万円問題」が話題でしたが、最近物価が上がっているので2000万円じゃ足りない気がします。実際いくらあれば「老後の暮らし」は安心ですか?
食費、光熱費、電車代……最近は生活に欠かせないものの「値上げ」のニュースを聞くことが増えました。上がり続ける物価を目にして「老後の生活は大丈夫なのか? いくらあっても足りないのではないか?」と不安になる人も多いのではないでしょうか。 本記事では、最近の物価上昇と、老後資金の1つの目安とされる「2000万円」で老後の生活は本当に安心なのかどうか解説します。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
2024年の家計負担は1人あたり2万9000円も上がる!?
実際にどれくらい物価が上がっているのか、総務省が毎月発表する消費者物価指数を見てみると、2020年を100とした場合の2024年3月度の物価全体の指数は107.2、うち食品だけでは115.7、さらに生鮮食品では117.7となっています。つまりコロナが流行した2020年から現在までの4年強で、物の価格が7%以上、食品については15%以上値上がりしているのです。 また物価上昇にともなう家計の負担は、2023年から2024年で1人あたり年2万9000円増えるという試算もあります。 最近の物価の上がり幅は非常に大きく、特に2022年からの2年強では6%以上も上がっています(2020年を基準としたとき)。同データでは、2015年頃から2021年頃までの変動幅は-1%~1%程度でほぼ横ばいだったことを踏まえると、急激な変化といえます。「最近は値上がりばかりだな」と感じてしまうのも無理はありません。
2000万円あれば老後は足りる? 足りない?
次に老後に2000万円あっても足りないのでは、という疑問についてです。 「老後に2000万円が必要」といわれるようになったのは、金融庁が2019年に発表した報告書の中で、平均的な高齢者夫婦無職世帯の場合、年金などの収入から生活費などの支出を差し引くと毎月約5万5000円の赤字が出る、そのため個人の金融資産から補填する必要があると示したことに端を発します。 この試算の通りでいくと、老後を30年間とした場合、5万5000円×12ヶ月×30年=約1980万円となるので、約2000万円の老後資金が必要となるわけです。 老後の家計や資産の状況は個人によって大きく差があるので「いくらあれば足りる」とは一概にはいえません。しかし、前記の金融庁の報告書は2017年の調査に基づく数値から試算したもので、もし最近のような急激な物価上昇が起これば生活費などの支出が増えるため、連動して毎月の赤字も増額することになります。 さらに2019年には、消費税率が8%から10%に変更されており、2017年と同じ物価であっても、現在の家計の支出は増えていることになります。 「老後2000万円」という金額は世間にも知れ渡り、目安にされることが多いですが、2017年時点の調査に基づいている数値であることを前提に、物価上昇やその他の変化が起こった現在、試算すれば2000万円以上必要になるかもしれないという想定は持っておくべきでしょう。