【中国】電動車の「智能化」競う 広州MSが開幕、日本勢も攻勢
広東省広州市の自動車展示会「第22回中国(広州)国際汽車展覧会(広州モーターショー)」が15日、開幕した。出展車両の約4割を「新エネルギー車(NEV)」が占め、各社が電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の最新モデルを披露。日本勢は中国市場で販売が落ち込む中、中国企業との連携を強化し、消費者の間で需要が高まる「智能化(スマート化)」技術をアピールした。 トヨタ自動車と広州汽車集団の合弁、広汽豊田汽車(広汽トヨタ)は、EV専用ブランド「bz」シリーズのスポーツタイプ多目的車(SUV)「ハク智3X」(ハク=金へんに白)を発表した。広汽トヨタ初の現地開発モデルで、2025年3月に発売する予定。 ハク智3Xには自動運転技術を手がける北京初速度科技(モメンタ)と共同開発した先進運転システムを搭載する。高速道路での走行のほか、市街地の一般道路でも車線変更や右左折、信号の状況に応じた加減速や停止、発進などを自動で行う。自動駐車機能も備える。運転席周りのマルチメディア機能をほぼ音声でコントールできるスマートコックピット「智能座艙(トヨタ・スペース)」も備え、中国市場のトレンドとニーズを取り込んだという。 15日の発表会に登壇した広汽トヨタの副総経理兼販売部長の梶川真哉氏は「上品さとシンプルさを備えた外観で、中国の消費者が求める美しさを体現した。ハードとソフトの両面で多様なニーズに応えるモデルだ」と自信を示し、海外での市場開拓も視野に入れていることを明らかにした。 ■東風日産は「N7」公開 日産自動車と東風汽車集団股フンの合弁自動車メーカー、東風汽車(DFL)の乗用車部門である東風日産乗用車は15日、EVセダン「N7」を公開した。日産が掲げる26年までの中期経営計画期間中に発売される中国市場向け初のEVで、25年上半期(1~6月)に発売する予定。日産は中国市場で26年度までに5車種のNEVを投入し、中国での巻き返しを図る考えだ。 N7は東風日産の新しいモジュラーアーキテクチャーを採用する最初のモデルで、EVとPHVを中国で開発・生産する。 N7には米半導体大手クアルコムの「クアルコム・スナップドラゴンTM8295プロセッサー」を採用したインフォテインメントシステム(車内で情報や娯楽を提供する情報通信システム)を搭載。シームレスなコックピット体験を提供する。 モメンタと共同開発した先進運転支援技術「NOA(ナビゲート・オン・オートパイロット)」も搭載する。 東風日産は14日、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)とスマートコックピット分野で協力すると明らかにした。ファーウェイとスマートコックピットを共同開発する初の外資系合弁メーカーとなる。 東風日産は、人工知能(AI)による音声認識の研究などを行う科大訊飛(アイフライテック)、米半導体大手エヌビディアといったテック企業とも提携を進めている。 ■ホンダは最新モデル ホンダは、中国合弁2社が4月に発表したEVの新ブランド「イエ」(イエ=火へんに華)シリーズのモデルを展示した。広州汽車集団との合弁の広汽本田汽車(広汽ホンダ)はSUV「イエP7」を披露し、年内に稼働予定の新工場で量産する方針を示した。東風汽車集団との合弁の東風本田汽車(東風ホンダ)はSUV「イエS7」を展示した。 イエシリーズは中国で新開発したEV専用のプラットフォーム(車台)を採用。バッテリーは中国の電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)製で、アイフライテックの音声認識機能を搭載するなど、中国企業との連携を強化したモデルだ。 イエS7は25年初めの発売を予定しており、イエP7も25年春以降をめどに発売する。中国市場でEVが急速に普及する中、ラインアップの拡充を急ぐ考えだ。 ■マツダは新型セダン マツダと重慶長安汽車との合弁会社、長安マツダ汽車はEVとレンジエクステンダー式EV(REV)をそろえた新型セダン「EZ―6」をアピールした。EZ―6は長安マツダが開発・製造する初めての電動車で、10月下旬に発売。インテリジェントドライブや車外からでも音声操作が可能なインテリジェントパーキングなどスマート機能をそろえた。 長安マツダの松田英久総裁は15日の会見で、「中国市場は電動化とスマート化の分野で世界をリードしており、中国ユーザーのニーズは多元化している」と述べ、「われわれにとっても今までにない発展のチャンスだ」と強調した。 長安マツダは第2弾となる電動車を25年中に量産化し、中国市場に投入する方針を示している。 ■シャオミやBYDも 初日の会場では、今年3月に量産1号車を投入したスマートフォン世界大手の小米科技(シャオミ)や、地元広東省に本社を置くNEV大手の比亜迪(BYD)の存在感が目立った。 シャオミは、傘下の小米汽車が手がけるEVセダン「SU7」やEVの高級スポーツカー「SU7ウルトラ」のプロトタイプ(試作車)を出展した。SU7ウルトラはトリプルモーターを搭載し、静止状態から1.97秒で時速100キロメートルに加速する。25年3月の発売予定で、価格は81万4,900元(約1,740万円)に設定した。 シャオミの雷軍・最高経営責任者(CEO)は15日に開いた会見で、「SU7ウルトラは予約販売開始から10分間で注文が3,680台を超えた」とアピール。SU7の単月販売台数は10月に初めて2万台を超え、11月も2万台超を達成できる見通しという。 雷氏は、「シャオミHAD(Hyper Autonomous Driving)」と名付けた運転支援技術もアピールし、市街地の幅が狭い路地の走行に加え、路面のくぼみや道路工事といった複雑な路面状況を即時に識別して最適なルートを選択できると技術力を強調した。 同社は運転支援技術の開発を加速しており、雷氏はモーターショーに先立ち14日に公開したPR動画で、過去3年間でスマート運転技術の開発に計55億元を投じたと明らかにしている。 BYDは会場A区2.1館の1フロアを同社とその傘下ブランドが占める大規模な展示スペースを設け、多くの人を集めた。 BYDの高級ブランド「仰望」はセダン「U7」のEV、PHVモデルを披露した。既に予約販売を始め、12月から販売店での展示も始める。EVタイプの航続距離(中国独自のCLTC基準に基づく)は720キロメートル、PHVタイプの航続距離は1,000キロに達する。 「王朝」ブランドはPHVの多目的車(MPV)「夏」を披露。王朝ブランドでは初のMPVとなる。今回は内装を初めて公開し、ファミリー層にアピールした。価格は30万元台になるとみられ、25年第1四半期(1~3月)に発売する。 会場には国内外のメーカーが約1,170台を展示し、このうちEVやPHVを中心とするNEVは512台となる。 広州モーターショーは例年秋に開催。今回の会期は24日までで、一般公開となる18~24日の入場料は50元。展示面積は22万平方メートル。主催団体によると、世界初公開の車両は78台発表される予定。23年11月に開催した前回の来場者数は延べ84万7,000人と過去最多を記録した。(広州・吉野あかね、畠沢優子)