JR福知山線脱線事故から19年 『示談』に応じた被害者の苦悩 JR担当者から『治療を長引かせている』と言われたことも…「ほとほと疲れた」
【玉置さんの夫】「何回も(交渉を)やっているけど、最初にJRが言ってくることと、担当者が替わって言ってくることが変わってくる。だから『どないやねん』っていう、こっちからしたら。最初は女性の平均寿命までの治療費を払うって話だったのが、変わってきた」 【玉置富美子さん】「『出せません』『保険でしてもらいます』と。でも私がやっているリハビリは、保険ではもう受けられない。そしたら(治療費は)出ないということ」 ただ、電車に乗っただけなのに…。交渉を通して、玉置さんの心は次第にすり減っていきました。 2023年5月、玉置さんは決断を下しました。 JRとの示談に応じることにしたのです。この時には、73歳になっていました。 【玉置富美子さん】「ほとほと疲れちゃった。もう嫌なこと言われるの嫌やし。ちょうど2、3年目でまた(担当者が)替わる。替わったら、またひどいことを言う人が来たら、もうそれがつらい。心を傷つけられるのが嫌だったから」
長引く交渉を終わらせるために合意した条件は、「90歳までの治療費や病院までの交通費はJR西日本が負担する」という内容でした。 【玉置富美子さん】「だんだん体が弱ってきているのに、またひどいこと言われたら精神的にもすごく傷つくから。『またJRと会わなきゃいけない』という思いがすごく嫌だったんです。その重圧から解放されることが一番大きかったと思います。だから納得じゃない。だって、私が倒れて家族全員がつらい思いをしています。娘も仕事に就けなかったし、家で私の介護をしなきゃいけないし、私も苦しくて寝られないこともあったし、納得できる理由なんてないんですけど、とにかく『JRと会いたくない』という、それが一番大きな理由でした」
示談に応じた後も、事故当時に着ていた服はあの時のまま残しています。 【玉置富美子さん】「なんかね、私の人生、ここで変わっちゃったって感じ。人生全てが変わってしまったので、捨てられない」 4月25日で事故から19年。 JR西日本は、けがをした人や遺族の9割以上と示談交渉を終えていますが、全ての人が納得した形で示談に至ったわけではありません。 罪のない被害者に対する誠実な対応が強く望まれます。 (関西テレビ「newsランナー」 2024年4月24日放送)
【関連記事】
- ■乗客106人と運転士が死亡 脱線事故19年 祈りささげる『追悼のあかり』 遺族は「忘れたらあかん」
- ■脱線事故車両から救出された男性 「誰かにこの恩を返したい」 5年にわたる治療・リハビリ 心のこもった医療に感謝 作業療法士となり被災地でも活動
- ■脱線事故を後世へ伝える『車両』 何のために保存するのか 多くの犠牲者が出た2両目に乗っていた男性 日航事故啓発施設で「人を感じられる場所」の大事さ思う
- ■道端に咲く“オレンジの謎の花” 茎に毒あり 正体は強い繁殖力の「ナガミヒナゲシ」 秘密は“実の中”に
- ■巣立ったツバメは500羽 50年かけてできた「タワマンのような」巨大ツバメの巣 真夜中のヘビ退治、崩落防止の補強、お寺の和尚さんが見守り役