JR福知山線脱線事故から19年 『示談』に応じた被害者の苦悩 JR担当者から『治療を長引かせている』と言われたことも…「ほとほと疲れた」
【理学療法士 塩見匡宏さん】「ちょっと伸ばしているけど、痛いですかね?」 【玉置富美子さん】「痛い」 【理学療法士 塩見匡宏さん】「リハビリをやめてしまうと、やっぱり玉置さんの生活もつらい思いをされるのかなと思います。この先も続けていかないとしんどいかなと思いますね。すぐ筋肉が硬くなりやすいので」
■つらい交渉…示談に応じられなかった理由
玉置さんが負ったのは「体の傷」だけではありません。加害企業であるJR西日本との示談交渉にも苦しめられてきたのです。 被害者は事故直後から、賠償額や条件について、JRの担当者と話し合わなければなりません。 治療を続けながら交渉にあたる玉置さんに、ある担当者は心ない言葉を浴びせました。 【玉置富美子さん】「(事故から)1年半後くらいでしたかね、その時の担当者に言われたのが、『今行っている病院とつるんで(治療を)長引かせている』っていう風に言われた時のショックさというのは…」 「痛みプラス、信じてもらえない、痛みを分かっていただけないつらさ。『つるんで、本当に痛くないことなのかな?』という風に自分を責めてしまう部分があったので、それはしんどかったですね」 痛む体に、追い打ちをかけるように負った「心の傷」。
JRを頼ることはできず、事故からおよそ10年後に自ら見つけ出したのは、正常に機能していない足の神経を再生させる手術でした。 【稲田病院 稲田有史医師】「いかがですか?大丈夫ですか?前のビリビリした痛みありませんね」 【玉置富美子さん】「ふふっ…」 【稲田病院 稲田有史医師】「(足の裏に触れると)くすぐったがってるでしょ?これ大成功です」 【玉置富美子さん】「ほんとね、もっと早くに分かっていたら、こんな苦しんでいなかったのになって…」 示談してしまえば、新しい治療法が見つかっても受けられないのではないか…。そんな不安も感じていました。 さらに、担当者が替わるたびに引き継ぎが不十分なJRに対し、家族も不信感が募っていきました。
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