スマホゲーム依存、進学校の「優等生」が通信制へ 「いい子」プレッシャーからの脱却
■保護者の悩み・スマホは受験の味方?
中学受験を経て進学校に通っていた中学3年のころから、ゲームやスマホにはまり、学校も休みがちになってしまった岡本歩さん(仮名)。両親や専門家と相談した結果、通信制の高校に転校し、兵庫県立大学への合格を果たします。ゲーム依存から抜け出したきっかけは何だったのでしょうか。大学生活を楽しむ現在のスマホとの付き合い方も含めて聞きました。 【写真】子どもの受験生活、大変だった「夫対策」 出願費50万円「無駄だ」と言われて妻は…
――中学受験して入学した中高一貫の進学校はいかがでしたか。 中学2年くらいまでは勉強も部活もうまくいき、学校生活を楽しめていました。しかし、2年の終わりごろにグッと身長が伸びる時期があって、ひざに痛みが出始めました。テニス部に所属していましたが、ひざに負担がかかるスポーツなので練習がつらくなり、部活から足が遠のいてしまいました。体を動かしてストレスを発散することができなくなって、なんだか無気力になってしまいました。成長期のせいか、いくら寝ても眠くて仕方がなくなり、朝も起きられない状態が続きました。 中学3年の5月ごろからは五月病のような状態になってしまいました。僕の通っていた中学では、クラス内で成績がいい順に学級委員などの役職に就いていました。僕も中学2年から3年の1学期にかけて学級委員を務めたのですが、一つの目標が達成できたからか、勉強に対するモチベーションを保つのが難しくなってしまったのです。それまでは量の多い宿題も真面目にこなしていましたが、「逃げたい」という思いが強くなっていきました。 今思えば、僕は子どものころからずっと、優等生を演じて「いい子」になろうとしていた気がします。頑張っていい成績を取れば、親や先生にほめられて認められる。それがうれしくて「もっと評価されたい」という気持ちが強くなる。 でも、自分が心からしたいと思うことがわからなくなっていたようにも思います。 ――優等生でいるのがしんどくなってしまったのでしょうね。 ゲームにはまり始めたのは、そのころからです。すべてを忘れたくて、夜、親が寝たのを見計らってはゲームをするという生活でした。その結果、学校に遅刻するようになり、友達に「ごめん、ごめん」とノートを借りるようになりました。それまでずっと優等生を演じていたせいで、そんな「できない自分」を認めることができず、ストレスを発散できていたテニスもできなくなり、ますます目の前の楽しいゲームをやるという悪循環でした。 ――ゲームの魅力はどんなところだったのでしょうか。 時間を忘れられるところです。ゲームの世界に入り込んでいるときは、周りのことも自分のことも考えなくていいのです。電源を入れれば簡単に楽しめることもあり、高校に上がったころには、毎晩10時ごろから明け方3時ごろまでゲームをするようになっていました。高校1年の夏に「友達との連絡にLINEが必要だから」と親にスマホを買ってもらうと、スマホにもはまって、ゲームの実況動画などをひたすら見るようにもなりました。 そうなると、ますます起きられなくなり、遅刻が増えて勉強もわからなくなった。そして、将来に何の希望も期待も持てない状態になっていったのです。 ――ご両親はそんな様子を見て、どう対応されたのですか。 何度も話し合いをしました。僕にとって救いだったのは、両親は僕がどんな気持ちなのかということを何度も聞いて、一緒に考えてくれたことです。おかげで「僕の意見が伝わるんだ」ということがわかって、うれしかったと同時に、自分の意見を言えるようにもなりました。 そして、母親と専門家のところに相談に行くことにしました。そこで「学校に通わずに勉強する方法もあるよ」と教えてもらい、学校説明会などにも参加した結果、オンラインで授業を受けたりレポートを提出できたりする通信制の高校に転校することに決めました。