スマホゲーム依存、進学校の「優等生」が通信制へ 「いい子」プレッシャーからの脱却
大学合格という目標 距離感を保てるように
――大学受験を目指そうと思ったきっかけは何だったのですか。 その高校でいい先生と巡り合えたことです。「大学ではこんな勉強ができるよ」「こんな道もあるよ」といった情報を教えてもらえたおかげで、大学進学への興味が少しずつ湧いてきました。そのころもスマホで動画を見たり、ゲームをしたりするような生活は続いていましたが、以前のような勉強のストレスからは解放されたこともあり、スマホの使用は少しずつ調整できるようになりました。 ――受験勉強中は、スマホとうまく付き合えましたか? 大学合格という目標ができたことで、「過去問を一つ終わらせたら動画を見る」「昼食後にリビングで少しだけYouTubeを見る」というように、自分でスマホやゲームとの距離感を保てるようになっていきました。 また、ストレスをためてスマホやゲームに手を出さないように、自己肯定感を上げる工夫もするよう心がけました。例えば、すぐにクリアできそうな小さな目標を立て、その目標を書き出しておく。それを達成できるたびに、シールを貼ったり丸を描いたりして成果が目に見えるようにしました。 ――そうした生活の変化を経て、兵庫県立大学に合格しました。今はどのような生活ですか。 自分のやりたいことはとことん突き詰めようと思い、気になることにはどんどん挑戦するようにしています。いくつかの部活やサークルを楽しんだり、アルバイトをしたりと、毎日が充実しています。忙しいので、スマホやゲームは音楽を聴いたり、文章を考えるのに使ったりと、帰宅してからちょっと触るくらい。家にこもっているよりも、忙しくしているほうが自分の性に合っていたのかもしれないですね。 ただ、今でも試験前などストレスがかかる状況になると、ついスマホに逃げて、熱中してしまうこともあります。だから「家はくつろぐ場所」と決め、レポートは大学やカフェで書いたり、スマホのスクリーンタイムをうまく活用して使用時間を制限したりと、いろいろな方法で解決を試みるようにしています。 また、定期的に自分がやりたいことを書き出すなど、スマホやゲームよりも楽しいことを考えることも心がけています。この「やりたいことリスト」は、何かを始めるときの原動力にもなっています。 ――大学では子どもとネットとの距離を考える活動にも参加しています。 小学生から高校生を対象に、スマホやゲーム、ネットとの付き合い方を主体的に考えてもらうための宿泊型イベントや、出張型のグループワークなどを提供する活動に参加しています。彼らを見ていると、家族や友人との関係がうまくいかず、ネットを「逃げ道」にしてしまっている子が少なくありません。僕の場合も、勉強がうまくいかないストレスや、親子関係において「認められたい」という気持ちが強すぎて、自分の主体性を失ってしまっていたことが、ゲームやスマホに逃げてしまった原因だったと思います。 ですから彼らと接するときも、頭ごなしに「ゲームやスマホは良くないものだから、使い方を考えよう」で終わらせるのではなく、それぞれの子が抱えている悩みに寄り添い、次のステップに踏み出せるような声かけができたらいいな、と思っています。 ――将来の進路として、教育関係も視野に入れているそうですね。 現在の活動を通じて、少しずつ教育に興味が湧いてきています。大学卒業後は教員になるか、大学院に進んで教育方法や子どもの心理学に関する研究をしてみたいです。僕の個人的な体験が、誰かの気持ちに寄り添うことにつながるのなら、これほどうれしいことはないですね。
朝日新聞 Thinkキャンパス