アニメ『さとりいぬ』のネガティブパワーが息苦しい世の中をかき回す
「今の日本の息苦しさを救ってくれるのは、さとりいぬのネガティブパワーです!」 【写真】さとりいぬには着ぐるみもある
フジテレビが運営する『めざましmedia』で、11月に衝撃的なアニメシリーズが配信スタートした(YouTubeチャンネル『めざましmedia』で視聴可能)。さも悟ったようなことを言う犬を主人公にした『さとりいぬ』(原作・ザビエル山田)だ。ほかの登場人物も、猫やタヌキなどすべて動物である。 その魅力と可能性を熱く語るのは、マンガ編集担当の信田朋嗣さん。FODで、漫画コンテンツの企画を全般的に手掛けている。 「昔からザビエル山田さんの四コマが大好きでした。ギクッとさせるシニカルな視点、人間の心理の裏側をわざわざめくる作風は、ほかの誰にも真似できません」 現在は、12本のショートアニメが公開されている。たとえば「正体」というタイトルの作品では、河原にさとりいぬと猫の「みけやま」が並んで座っている。みけやまが川に小石を投げながら「僕、司法浪人って名乗ってるけど、司法浪人ということで世間体を保っているニートなんです。それがバレて彼女に逃げられました」と語る。 それに対してさとりいぬが「当然でしょ。そうとう問題あると思いますよ」とクールに答えると、みけやまは我が意を得たりと「ですよね。中身を見ないで肩書で判断するなんて」と彼女を非難。その途端、さとりいぬは「お前に言ってんだよ!」とねこやまを怒鳴りつける。都合のいい自己正当化の欺瞞を容赦なく突くところが、まさにザビエル節だ。
ザビエル山田のマンガがフジテレビの媒体に載ったという奇跡
ザビエル山田は、34年前に集英社の『ビジネスジャンプ』でデビュー。独特のネガティブな雰囲気に満ちた四コマ漫画で人気を集め、一時期は10本以上の連載を持っていた。その名前とシニカルな笑いに満ちた作品を記憶している人も多いだろう。ここ15年ほどは四コマ市場の縮小のあおりを受けて、静かめの活動が続いている。ただ、SNS(Facebook)では積極的に新作を発表し続け、そのギャグセンスはますます冴えわたっている。 「もったいないと思ったんです。今の世の中は建前やきれいごとを強いられる空気が蔓延している。そんな中、ザビエルさんのシニカルでキツメの毒に救われる人はたくさんいるに違いない。その魅力をもっともっと広く伝えたいと思って、まずは去年の12月から、FODで『さとりいぬ』の四コマを連載してもらいました」 フジテレビが運営しているメジャーな媒体に、けっして明るくはないザビエル山田のマンガが掲載されたこと自体が、驚くべきニュースである。しかも、たちまち関係者のあいだで評判となり、あれよあれよという間にアニメ化までされてしまった。 声を務めるのはトム・クルーズの吹き替えで知られる声優の森川智之や、お笑い芸人の有野晋哉(よゐこ)など超豪華な顔ぶれ。オリジナルの着ぐるみも作られ、制作側の並々ならぬ気合いと期待が感じられる。この展開は「21世紀の奇跡」と言っても過言ではない。静かめな活動が続く多くのベテランクリエイターに、夢を与える出来事でもある。 ザビエル氏本人も「こんなことが起きるなんて、生きててよかった。どう受け止めてもらえるのか不安ですけど」と、暗めの声で喜びと彼ならではの表現で今後への期待を語る。さとりいぬは、20年ほど前に雑誌の連載マンガで誕生したキャラクターだ。彼は常々「世の中にまん延するきれいごとや温い空気に対するイラ立ちが、私の創作の原動力です」と語っている。さとりいぬが発するセリフは、作者の心の叫びに他ならない。 雑誌に連載されたときは、さとりいぬ以外の登場人物は、彼がいつも描いている悲哀に満ちたオヤジなどの人間だった。信田さんは「そのままだと毒気が強すぎて、幅広く支持されるのは難しい」と考え、登場人物を全部動物にしてほしいとザビエル氏に依頼した。 「かなり苦労したようですが、かわいいキャラクターをたくさん生み出してくださいました。動物にしたことで、毒が適度に中和されて、広く受け入れられやすくなったと思います。それに、動物だったら強めの言葉も、ある程度は許されますからね」
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