関東甲信地方の「遅い梅雨入り」「早い梅雨明け」が景気に与える影響【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
東京の真夏日はこれまでのところ、昨年の方が多い状況。「電⼒需給ひっ迫注意報」発生もなし
2024年は暑い日が多いと報じられていますが、7月21日現在、東京の真夏日は22日で、昨年23年の30日を下回っています。また、熱帯夜も8日で、23年の11日を下回っています。 24年7月1日~21日の21日間の最高気温の平均は32.3℃で、23年の同期間の平均32.9℃を0.6℃下回っています。 また、東京の真夏日の連続日数記録は2023年の7月6日~9月7日の64日間連続です。2024年は7月2日~7月10日の9日間連続がこれまでの最長です。7月17日から5日連続真夏日が現在継続中ですが、新記録更新は難しそうです。 最も真夏日と熱帯夜が多かった2023年ですが、東京エリアの最大電力・実績は7月18日に記録した5,525万Kwで、22年8月2日の5,930万Kwを下回りました。省エネがかなり進んだと思われます。今年24年は7月21日現在で、7月8日の5,490万Kwが最大です。24年は4月以降毎月前年同月より、低い最大電力・実績になっています。23年に続き今年も、22年のように「電⼒需給ひっ迫注意報」が出ることは回避されています。電力の供給不足が経済活動に影響を及ぼすことはなさそうです。
6月「景気ウォッチャー調査」では、「気温」「猛暑」「梅雨」という天候関連のDIが5月に比べ改善
6月「景気ウォッチャー調査」で現状判断DI(季節調整値)は前月差1.3ポイント上昇の47.0、先行き判断DI(季節調整値)は前月差1.6ポイント上昇の47.9と5月から幾分改善しました。どういう要因が改善に寄与したかキーワードごとに関連DIを作成してみると、「気温」「猛暑」「梅雨」の天候に関する関連のDIは現状判断、先行き判断とも6月は5月から改善しました。 「気温」の現状判断では「6月に入って気温が急上昇したことで、エアコンやサーキュレーターなどの季節商材の販売が伸びている。さらに、エネルギー価格の高騰に伴い、省エネ性能の高い製品が人気となり、単価の高い商品の販売が伸びている。」という近畿の家電量販店・人事担当が「良くなった」という判断をしていました。 また、先行き判断では「今夏も気温が高い予想のため、ドリンク類やアイス等が伸び、夜間の来客も増えそうである」という東京都のコンビニ・経営者の「やや良くなる」という。コメントがありました。「気温」関連DIは現状59.5、先行き61.8と景気にプラスという見方が多いことがわかります。 「猛暑」関連DIは現状59.4プラス要因とみる見方が多い一方、先行きは48.8と景気判断の分岐点50を若干下回りました。現状判断では「猛暑の予報が出ている影響か、夏物をまとめ買いする客が増えている。」という「やや良くなった」という判断をしている東北の衣料品専門店・経営者のコメントがありました。先行き判断では、「今年の夏は猛暑の予報が出ており、季節商材を中心とした売上には期待しているが、電気代・物価高騰の影響により大きな景気回復は見込めない。」四国の家電量販店の副店長の「やや良くなる」という判断をしたコメントがありました。一方、「長期予報では今年の夏も猛暑が予想されており、米の高温障害による収量の減少が予想される。」という理由で「やや悪くなる」と判断した東北の農林水産業・従業者がいました。 「梅雨」関連DIは現状48.0と景気判断の分岐点50を若干下回った一方、先行きは58.3と景気にプラス要因とみる見方が多くなりました。現状判断では甲信越の商店街・代表者が「梅雨入りの遅さといった異常気象もさることながら、中心街を歩く人影がない。中心街の店舗に魅力がないとも思えないが、打つ手なしである。」というコメントで「やや悪くなった」と回答しました。先行き判断では「コンビニの稼ぎ時である夏季に向けて、梅雨の時期も短くなり天候が安定すれば、来客数の増加が見込まれる。」という「やや良くなる」と判断した東海のコンビニ店長のコメントがありました。 一般的に梅雨明けが早く猛暑になると、電力需要が増えエアコンや冷たい飲料などが売れるので、景気にはプラスになると思われます。他方、あまり暑すぎると外出機会が減少し、景気の押し下げ要因になる可能性もあります。景気ウォッチャーのコメントも両面ありますが、総合的に判断すれば、経済的にはプラスと考えられると思われます。 ※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。 宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト) 三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
宅森 昭吉
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