〈詳報〉情報漏えいの元鹿児島県警巡査長に有罪判決 「組織改善したかった」被告主張に鹿児島地裁「正当化できない」
職務上知り得た秘密を漏らしたとして、地方公務員法(守秘義務)違反の罪に問われた元鹿児島県警曽於署巡査長の男(49)=鹿屋市札元1丁目=の判決公判が5日、鹿児島地裁であり、松野豊裁判官は懲役1年執行猶予3年(求刑懲役1年)を言い渡した。漏えい先の記者から信頼や情報を得る目的だったとして「漏えいを正当化できない」と述べた。弁護側は控訴しない方針。 【写真】判決骨子を見る
被告は7月11日の初公判で、新型コロナウイルス宿泊療養施設での強制性交容疑事件の処理経過を不自然に思い、再捜査を期待して漏らしたと主張。また捜査資料の積極的な廃棄を促す県警のあり方に疑問を持ち「組織を改善したかった」と供述していた。 松野裁判官は判決理由で「個人の犯罪経歴情報に加え100件以上の事件情報を漏らしており、プライバシー侵害の程度は高い」と指摘。被告が捜査状況に疑問を感じていた事件はそのうちの一つにすぎないことから「漏らした情報の大部分が、事件への疑念や警察組織への不満とは直接関連しない」と判断した。 即断や思い込みにより疑念や不満を募らせていたことも否定できないと言及。「金銭など利益を得るための犯行とは一線を画すが、量刑上考慮するにも限度がある」と結論付けた。 判決によると、2023年6月12日、県警本部で自身のスマートフォンを使って、1人の犯罪経歴情報をウェブメディアを運営する福岡市の男性記者に送信。同9月20日から10月20日ごろには、捜査情報が記された書面「告訴・告発事件処理簿一覧表」10枚を鹿児島市で男性記者に手渡し、24年3月11日には同一覧表47枚を郵送して、職務上知り得た秘密を漏らした。
被告は当時、県警本部警備部公安課に所属していた。県警は5月20日に懲戒免職処分にした。
南日本新聞 | 鹿児島